15
店のドアを開けると、すぐにトモヤが飛び出してきた。
「リナーっ! お帰り!」
笑顔のリナさんに飛びつく……寸前にトモヤを止めた。
その勢いで飛びついたら、リナさん倒れるだろっ。
リナさんの具合が悪くなったのは、食あたりとか肉体的な事ではなく、
やはり記憶に関わる事だろう、と医者が言っていた。
「何かを見て記憶が戻ろうとして、でもそれを思い出すと精神的に耐えられないために、
思い出させまいとする。その葛藤の為に、激しい頭痛が起こったりするんです」
「これから何度も同じ事が起こるでしょう。
その度に記憶が少しずつ戻って点と点を結び、最終的に全てを思い出します」
「記憶を無くしていた間の記憶に関しては、消える人もいれば覚えている人もいます。
その人次第なので、私にも何とも言えません」
トモヤに引っ張られて、リナさんが笑いながら店の奥に進む。
あの笑顔の下に、どんな記憶が眠っているのだろう。
「リナ! ご飯一緒に食べようよ! 待ってたからお腹ペコペコだよ」
「リナさん、って言いなさい!」
「つーか、トモヤさっき飯食ってなかったっけ?」
「食べたけどさー、腹減ったもん!」
レイナさん、リョウイチさんが、ホッとした顔でリナさんを見ていた。
リナさんはさっきが嘘みたいに、穏やかに微笑んでいる。
賑やかな声を聞きつけて、父さん母さんも厨房から覗きに来た。
明かりが点ったような明るい空気が流れる。
あの時、リナさんの視界にあったもの。
空になった弁当箱。
海。
りんご。
果物ナイフ。
ナイフ……一つ目の点なのか?
続く