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「カイト、あの美人は誰だ?」


またこの質問か。


今日一日何回同じ質問されてんだ?



昼時の店。


リナさんが客席まで料理を運んでいる。


「記憶喪失なら、普段の生活に戻った方がいいんだろ?


うちは働かざるもの食うべからず、だからね」


スパルタな母さんの一言で、店の手伝いをする事になったリナさん。


文句も言わずに……言えずに、出来上がった料理をどんどん運んで行く。


慣れてる。


前にウエイトレスやってたのかな。


「お待たせしました」が言えないかわりに、にっこりと微笑むリナさん。


男共がぼーっと見とれている。



すっとした顔立ち、無駄なモノのついていないスリムな体。


頬に赤みが差してきたものの、白い素肌。


島にはちょっといないタイプの美人だもんな。


父さん母さんにも打ち解けて、緊張が解けたんだろう。


やっと笑顔が出るようになった。


人をホッとさせるような穏やかな笑顔。


美人に微笑まれて、鼻の下が伸びない男はいない。



で、同じ質問をされてる訳だ。


「リナさんて言うんです」


「どっから来たんだ?」


「……遠くから」


「は?」


「俺に会いに来たんですよ。東京での仲間で」


いろいろ突っ込まれると面倒臭いから、最後はこれで押し切った。


リナさんに聞いても、困るだけだろうし。



男達の視線を集めながら、リナさんは一生懸命皿を運んでいる。


トモヤがリナさんの周りを嬉しそうに飛び跳ねながら、付いて回っている。


こら邪魔だって。



続く