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財布が乱暴にテーブルに置かれる。
「あたしの負け。返すわ」
「ありがとう」
何でお礼言わなきゃなんないんだ?
もうちょっと粘られるかと思ってたから、拍子抜けしたようなホッとしたような。
アイツは窓の外を見ながら、コーヒーを飲んでいる。
本気じゃなかったって事か、あぶねー。
腕時計を見る。
2時過ぎ。
タクシー捕まえるか、朝まで時間をつぶすか。
「マジでどうする? 始発まで?」
「……散歩したい」
「散歩?!」
「ハンバーグ食べちゃったから運動しないと」
「こんなに寒いのに?!」
「付き合ってもらうわよ。約束だからね」
ホテルとか、密室で二人きりになるより良いか。
コイツ一人で街に放り出す訳にもいかないし。
支払いを済ませて外に出る。
途端に冷たい風が頬を打つ。
うぇええ、やっぱり寒い!
今ハンバーグを食べたばっかりだから、体幹はあったかいけど。
アイツはポケットに手を入れたまま、俺の一歩先を歩いていく。
あのコート、薄そうだけど寒くないのかな?
行く当てもなく歩いていくアイツの後姿は、何だか寂しそうに見えた。
何かあったのかもしれないな。
よし! 今日は朝まで付き合ってやるか。
続く