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「すっごい良かったねー!」
「う、うん」
「ほら、あの、You're on my heart just like a tattoo ~ の部分がさぁ」
テンションが上がっているらしく、ずっとライブの感想を話し続ける。
ライブで興奮しているのか、アイツの目が潤んでる。
二人並んで会場を出る。
火照った顔に、冷たい空気が心地良い。
アイツは酔っ払ったようで、鼻歌でも歌いそうなくらいにご機嫌だ。
来た時と同じように、男共の視線を集めながらロビーを通り抜けていく。
あの視線に気付いていないのか?
「あ、雪!」
ビルの外に出た瞬間、アイツが空を見て叫んだ。
見上げると、グレーの空から白い雪が音もなくフワフワと舞い降りてくる。
「冷えると思ってたけど、まさか雪降るとは思わなかった」
嬉しそうにそう言って振り向いたアイツの肩に、白い雪がふわりと落ちた。
いくつもいくつも舞い降りては、ゆっくり溶けていく。
雪が静かに降り積もっていく。
アイツに。
俺に。
街に。
まるで粉砂糖みたいに、全てを覆い隠して。
Sugar Coat。
クラブで見せる、男っぽい顔。
今日初めて見た、女らしい顔。
色んな顔を纏うアイツ。
全ての顔を一枚ずつ剥がしたら、その下にはどんな素顔が隠れてるんだろう?
その飾りを取って、本当のアイツが見てみたい。
寒さで指先が赤くなっているアイツの白い手。
堪らなくなって、手を伸ばしその手を取った。
冷たい指先。
ビックリしたように俺を見るアイツ。
それと同時に俺の腹の虫がグーッと盛大に鳴る。
あ……腹減ってたんだった、忘れてた。
だからって、こんな時に鳴らないでくれよ。
思わず赤面する俺に、アイツが呆れたように笑って言った。
「もつ鍋と熱燗行きますか」
唇から八重歯を覗せながら、アイツが俺の手を握り返した。
『Sugar Coat』
了
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□Main Theme□
『SUGAR SHACK』 (「SUGAR SHACK Official soundz mixed by DJ HAL」より)
『Drama』 (三浦大知「Lullaby」C/W)
皆様、素敵な夜を。
メリークリスマス♪