5
空いているシートに二人並んで腰掛ける。
ざわめく客席。
薄暗い照明の中、ライブが始まるのを待っているたくさんの客達。
男も、女も。
アーティストの登場を待っている。
アイツは寛いだ様子で、会場を見回している。
きちんと揃えて斜めに流された、スラリとした脚。
あの擦り切れたジーパンの中に、こんなに綺麗な脚を隠してたなんて。
知らなかった。
つか、ずるいだろ。
何だか騙された気分だ。
脚からゆっくりと視線を上げていく。
体のラインがくっきりと出るワンピース。
なだらかな曲線を描く腰。
きゅっと締まったウエスト。
柔らかく盛り上がった胸。
抱き寄せたら、パズルみたいにしっくりと馴染みそうだ。
馴染む?! ……俺何考えてる?
顔を見る。
流れてる曲にリズムを取りながら、ステージを観ている横顔。
丁寧にマスカラを塗った長いまつげ。
照明に反射する艶やかな唇。
アイツがふっと俺の方を向いて、視線が合った。
!
慌てたけど、何事もなかったようにグラスに手を伸ばす。
……何で目が合っただけで動揺してるんだよ、しっかりしろ俺。
「何飲んでるの?」
「これ? えーと、なんだっけ?」
「顔赤いよ? もう酔ってるの?」
「……かも」
アイツがシャンパンの細いグラスを唇に寄せる。
「水じゃなくていいのかよ?」
「今日はいいの。まだ時間も早いし、隣にアンタもいるし」
!
細く立ち上るシャンパンの泡。
一つ一つ光を弾き返しながら、アイツの唇に飲み込まれていく。
客席の明かりが絞られて、ステージにスポットライトが当たり、
ピアノの心地良い音が響き始める。
会場が期待と拍手で満たされていく。
ステージからの照明で暗闇に浮き上がる、アイツのうっとりとした横顔。
綺麗だ。
続く