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秒針の音が響く。
水道から水滴がシンクに落ちる。
部屋の中は静かで、空気の動く音が聞こえる。
父さんは全ての動きを止め、何の音も立てない。
口の部分のビニールも。
胸も上下してない。
終わったのだ。
最後の最後で少しだけ暴れた父さん。
目をつぶって何も考えず力の限り縄を締め上げた。
見てしまったら、手を緩めてしまいそうで。
縄から手にブルブルと振動が伝わって、やがてぷっつりと動きが止まった。
そっと目を開ける。
縄にぶら下がるように、父さんの首ががっくりと垂れている。
その重み。
ゆっくりと頭を下ろして、縄を頚から外す。
為すがままの父さんの体。
俺も力尽きて、その場に座り込む。
右手の中指が痺れている。
両手の平が痛い。
皮で擦り切れて、血が滲んでいる。
重い物を持ちなれているはずの腕が、熱を持って痛みを訴える。
暗い部屋の中、母さんの遺影と目が合う。
母さん、俺、これで良かったんだよね?
緊張が解けて、急激に睡魔が襲ってくる。
少しだけ、眠らせてくれ。
続く