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昨日やっぱり話すべきではなかった。
もし態度を変えられてたら……。
首を振る。
まだ分からないじゃないか。
顔を合わせた瞬間に、きっと答えは出る。
ファミレスの帰り、恐る恐るコンビニのドアを開ける。
店員さんは陳列をしてるみたいで、レジにはいなかった。
店の奥へ足を進める。
……いない。
今日お休みだったっけ。
いつもならお休みは教えてくれるのに。
レジでコーヒーを買って、イートインの椅子に座る。
何だか変な緊張が解けて、一気に疲れてしまった。
昨日も結局殆んど眠れなかった。
父さんの顔色は元に戻っていたものの、首にはビニール紐の痕がくっきりと残っていた。
ビニールがこすれて出来た赤み。
うっ血して青くなった部分。
恐ろしくて目を背けた。
紐状のモノは全てアパートの廊下に出して、手が届かない場所に置いてきた。
アパートに置いてある物全てが凶器に見える。
包丁も。
傘も。
風呂釜も。
死ぬ事が目標になっている今の父さんには、どんなモノを見ても、死に方が想像出来る筈だ。
出来るだけ、布団の周りに物を置かないようにしてきたけれど。
今日これからアパートに帰って、父さんが死んでいたら。
俺は……俺は……。
肩を叩かれる。
ハッとして振り向くと、店員さんがコーヒーを手に笑っていた。
「大丈夫? 顔青いよ?」
「……うん!」
店員さんがいつものように隣に座って、ミルクと砂糖をたっぷりコーヒーに入れた。
その様子は、昨日までと変わらなかった。
良かった……よそよそしい態度を取られたりしなくて。
美味しそうに熱いコーヒーをすする店員さんの横顔を見ながら、
さっきまでの落ち込みが嘘のように、気持ちが暖かくなる自分がいた。
続く