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店員さんは、ずっと黙って俺の話を聞いててくれた。
そして、中身を飲み干した缶がすっかり冷たくなった頃、一言だけ言った。
「優しいんだね」
優しくなんかない。
俺が本当に優しかったら、父さんをこんな風にはしてなかったはずだ。
ただ取り繕うだけの、うわべだけの優しさだ。
無言のまま、店員さんを家へ送り届ける。
ドアに入りかけた店員さんが振り返って、言った。
「そんなに自分を責めないでね。今の状態は君のせいじゃないよ」
「……」
「明日も店で待ってるね。お休み」
にっこりと笑って、ドアを閉めた。
一人で今来た道を戻り始める。
俺もやっぱり動揺してたんだな。
普段ならあんな話絶対にしないのに。
あんな父さんを見た後で、重すぎる話しちゃって、
店員さん引かなかったかな。
やっと見つけたホッと出来る時間。
ほんの15分くらいの時間。
それを失う事が、今はとても怖い。
こんなにも大きな支えになってる事を思い知らされる。
その反面、誰にも言えなかった思いを明かした事で、気分が軽くなっていた。
状況は変わらないけれど、知っててくれる人がいる。
あの人がそばにいてくれれば、俺はまだ頑張れそうな気がする。
明日待ってるって言ってくれた。
どんな態度を取られるか不安だけれど。
その言葉を信じて、コーヒーを飲みに行こう。
店員さんの家を振り返る。
その空に輝くシリウスが、少しだけ位置を変えていた。
続く