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学校から帰ってきて、電気も付けずにソファでぼんやりしていた。
父さんは出かけたみたいだった。
壁に掛けてある時計の秒針の音だけが聞こえる。
じっとしていると、右手の甲だけが生きてるみたいにどくんどくんと脈打つ。
包帯を巻いて学校に行くと、担任が声を掛けてきた。
「どうした、手?」
「あ……ガラスで切って……」
「怪我したのか。どのくらいで治りそうなんだ?」
「1ヶ月くらいです……でも、もうボクシングは出来ないだろうって」
「! ……深かったのか」
「そうみたいです」
「……分かった。スポーツ推薦じゃなくて、奨学金の方で動いてみるから」
「あ……ありがとうございます」
「まずは傷を治して」
「はい」
分かってたけど、改めて現実を突きつけられるとやっぱり凹む。
トイレに入るにも、食事をするにも、倍の時間がかかる。
左手で字を書くのは殆んど不可能で、友達にノートをコピーさせてもらう。
学校生活って、意外と大変だ。
疲れ切って家に戻る。
父さんの事を考えると腹立たしいし、気が重いから帰りたくなかったけど。
今日はゆっくりと体を休めたかった。
普段使わない筋肉を使って、疲れていた。
父さんがいなくて良かった。
夕日が当たる庭には、バンデージが干しっぱなしになっていた。
風でひらひら揺れるバンデージ。
風に吹かれて飛んでいってしまえばいいのに。
続く