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冷蔵庫を開けて飲み物を探す。


水のペットボトルを取り出すと、奥に何かの缶が入っている。



取り出してみると、水ようかんだった。


水ようかんはあんまり好きじゃないけど……。


何となく食べたくなって、蓋を開ける。



スプーンですくって、口に運ぶ。


甘っ。


この甘ったるいのが好きじゃないのだ。


母さん、夏になるとよく食べてたなぁ。


「おばあちゃんが好きで、子供の頃から夏になるのが楽しみだったの」


って言って、嬉しそうに食べてた。



その顔を思い出した次の瞬間、急に涙が出てきた。


止める間もないまま、溢れ出てくる。



母さん、もうすぐ夏が来るよ。


大好きだった水ようかん、俺が食べちゃったよ。


新しいの冷やしとかなくていいの?



小声で問いかけてみる。


答えは返ってこない。


リビングのドアを開けて、母さんは今にも入ってきそうなのに。


庭で洗濯物を干し終わって、縁側から上がってきそうなのに。


「何泣いてるの?」


って、きょとんとした顔で俺を見るはずなのに。



もう、この家のどこにも。


世界のどこにも。


母さんはいない。


母さんは……死んだんだ。



食べきれない水ようかんを持ったまま、俺は涙を流し続けた。



こうして、父さんと母さんと俺の、三人の生活が唐突に終わり、


父さんと二人の生活が、否応なしに始まった。



続く