10
そっとアパートのドアを開き、中の様子を伺う。
ビールの空き缶が床に転がり、肉じゃがが飛び散っていた。
父さんは布団に戻って、こちらに背を向けて寝息を立てている。
ホッとして静かに息を吐く。
鳩尾はさっきより痛みが引いている。
音を立てないように空き缶を拾って、肉じゃがをビニール袋に捨てる。
奥さんの肉じゃが、美味しかったのにな。
鍋の蓋を取って中を覗く。
おかゆも食べてない。
空きっ腹にビールを飲んで。
胃も肝臓も痛めつける。
そうやって、早く死のうとしてるのか。
鍋を冷蔵庫に入れる。
明日火を入れておけば、もう一日くらいは食べられる。
濡らした雑巾で床を拭く。
台所で顔を洗って、布団を引く。
不用意に父さんを起こさないように、俺は台所で寝ているのだ。
時計を見る。
もう1時を回っている。
電気を消して、布団に包まる。
一気に疲れと眠気が襲ってくる。
寝入る直前に、寝ている父さんの背中を見た。
……昔はあんなじゃなかった。
続く