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クソババァにゲンコツをくらって、ホンキの涙目でタイチを見送る。
車に乗り込む直前に、タイチがオレの顔をまじまじと見た。
「どした?」
タイチはニコリともせずに、抱きついてきた。
うわぁあああ!
窓から覗いていた女子たちの悲鳴が聞こえる。
「タ、タイチっ、暑い!」
すっとタイチが体を離して、肩をすくめ薄く笑った。
「お、お前は外人かっ?!」
エノヤンが突っ込む。
あービックリした、違う汗かいちゃったよ。
タイチを乗せた車が、校門を出て行く。
助手席に乗ったタイチが、窓を開けて手を振る。
オレも大きく手を振る。
スピードを上げる車。
タイチが何かを叫んだけど、聞こえなかった。
「何だよーっ?!」
オレの声が届くはずもなく。
車が角を曲がって、タイチの姿は見えなくなった。
それでも教室に戻る気になれなくて、誰もいない道を見つめ続けた。
また会える。
分かっていても。
涙が止まらなかった。
空は晴れて、白いクリームパンみたいな雲が流れていく。
蝉はうるさいくらいに鳴いて、オレの濃い影が足元に落ちていた。
明日から、夏休み。
続く