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祖父ちゃんと夢子に付いて、慣れた繁華街を歩く。


お気に入りのTシャツとジーパンと、赤いスニーカーを履いて。



薄暗い夕暮れの繁華街で提灯が揺れる。


たくさんの人でざわめく紫色のテント。


入り口から眩しい明かりが漏れてる。


初めてここに連れられてきた来た時を思い出す。



あの子の舞台を観るのは、これが最後。


タイチとは……会えるのかな。


分からない。


あのテントの中に答えは、ある?



ギブスをはめた左腕をかばいながら、入り口を通り抜ける。


顔を知ってるおっちゃんが、ビックリしたような顔でオレを見た。



祖父ちゃんの隣に座る。


何か緊張する。


久しぶりだからかな、ドキドキが止まらない。



客席が暗くなって、ステージが明るくなる。


ステージの上で舞い踊るあの子。


嬉しそうに楽しそうに。


あの完璧な笑顔。


タイチである事を隠して。


何があっても、笑顔の下に全てを押し隠して。


それでも。


笑うあの子はとってもキレイで、オレは目が離せない。


スポットライトの中一人で踊る、もう一人のタイチ。



どっちが、本物のタイチなんだろう。



色々考えすぎたのか、胸が苦しくなって。


オレは初めて、客席で声を出さずに泣いた。



続く