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レゲエの暢気なリズムが、車の中を流れる。
レイナは何も話さず、外をずっと見ている。
窓にレイナの顔が写っているが、暗くてどんな表情をしているのかまでは分からない。
「家どこなの?」
「……ああ、このまままっすぐ進んで。曲がり角に来たら言うから」
「近いのかな」
「割とね」
「ふーん。飯でも食いに行かない? 俺お腹ペコペコで」
「店で食べれば? 家族待ってるから、私帰る」
「あ、そうなんだ。実家なのか」
「……そう。帰ってご飯作らないと」
「えっ?! これから作るの? 俺もお呼ばれしようかな」
「何言ってんの? 呼ばないわよ」
「……冗談だよ、何怒ってんの?」
「怒ってないけど……」
曲が変わる。
「じゃあさ、今度休みの日に一緒に遊びに行こうよ」
「はぁ?! 行かない」
「行こうよ、ってかこの辺案内してよ。あの店以外よく分かんないんだよ」
「ガイドブック買えばいいじゃない」
「地元の人の行くとこに行きたいんだよ。その方が美味しかったりするじゃん」
「店のおじちゃんに聞いて」
「おじちゃん以外の店に行く、って言ったら傷つくじゃん」
「……そうだね」
「だろ? だから案内してよ。不慣れな旅行者を放っておくなんて、地元民としていいのかなぁ」
頬杖をついたまま、初めてチラリと俺を見たレイナは、思いっきりため息をついて言った。
「分かったわよ。行くわよ、行けばいいんでしょ?」
「やったぁ! いつが休み?!」
「明後日」
「明後日ね」
「ただし」
「……ただし?」
「夕方までよ。私夕食作らなきゃだから」
「分かった。じゃあ、午前中から行こう」
「あ、そこ右に曲がって。カーブミラーのところで降ろして」
「OK」
車から降りて、背中を見せながら道を歩いていくレイナを見送る。
その引き締まった足首。
明後日が楽しみだ。
続く