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吐き出す息が白い。


もうそんな季節なんだ。


街中にイルミネーションが輝き、 賑やかなクリスマスソングが流れていく。


日が暮れたばかりの街。


ショーウィンドウを見ながら行過ぎる人々は、


照明に照らされて、笑顔になる。



俺の隣にも、彼女がいる。


可愛くて、砂糖菓子みたいな彼女。


この間告白されて、軽い気持ちで付き合い始めた。


俺にキスをされて、微笑みながら頬を染める。


今の俺にきっと、つり合いの取れる女。


可愛らしさを、どこか冷ややかに捕らえながら、微笑み返す。


幸せを装いながら、うつろな気持ちで歩き続ける。



予約していた店に入る。


女が喜びそうなレストラン。


テーブルにはキャンドルが置かれ、間接照明が彼女の顔を綺麗に見せる。


お決まりのシャンパン。


クリスマスで忙しいのか、コース料理が間髪入れずに運ばれてくる。


クリスマスプレゼントを交換する。


ままごとみたいだ。



俺からは、薄いピンク色のガーベラのアレンジメントと、薔薇のディフューザー。


香りの記憶は、心の奥底にこびりつく。


俺と別れた後、薔薇の香りを嗅ぐ度に、俺を思い出すだろう。


冷たい気持ちで選んだプレゼントに、笑顔になる女。


口端だけで微笑み返す。



女からは、小さな箱。


「きっと似合うと思うんだけど……」


自信なさげな物言いに、少しイラつく。


乱暴に箱を開ける。


「!」


ダイヤの、ピアス。


「何かね、ずっと同じの付けてるから気になってて。きっと似合うと思うの」


「……」


「赤もすごく似合うんだけど、飽きない?」


「……」


「清浄無垢、って意味があるんだって。松山君、そういうイメージあるよね」


「そう?」


「うん」


清浄無垢か、かけ離れてるよな。


人を見る目がないんじゃないのか。


「ダイヤモンドには、永遠の愛、って意味もあるんだ。


俺の事、ずっと好きでいてくれるの?」


「……うん……」


頬を染め、嬉しそうに微笑む。


「本当に、ずっと? 何があっても?」


「……うん!」


「ありがとう。でも俺、この赤い石が一番好きなんだ。今は変える気はない」


女の顔が曇る。


「大事に取っておいて、大事な時につけるよ」


付け替える訳ないけどな。


女の顔がパーッと晴れやかになる。




単純な女。


俺の言動一つ一つに感情が動かされる。


何て騙しやすい。


ホストクラブなんかに行ったら、良いカモになるだろう。



ベルトコンベアーのように流れてくる皿を片付けて、外に出る。


手を繋ぐ。


ビクッと体が反応するのが分かる。


……初めてなのか?


初めてが俺なのか、ご愁傷様。


俺はあんたを大事にしないよ。



どうやって悦ばせて、どうやって傷つけよう。


肉食動物が獲物をいたぶるような目で、女を見つめ、微笑みかけた。




続く