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お腹の大きな妊婦に混ざって、待合室で待っているのはキツい。


男で、どうみても10代だもんな。


制服じゃないだけましだけど。


じろじろ見られる。


この居たたまれなさを体験して、男は父親になるのかなぁ。


……親父はどうだったんだろう?



診察室から黒澤さんが出てきた。


「……妊娠7週目だって」


久しぶりに見る、嬉しそうな笑顔。


少し疲れているけれど、綺麗だ。



診察室の視線が、俺たちに集まる。


「ご結婚はされてるの?」


いきなり質問される。


皆興味津々で、目がキラキラしてやがる。


「……いや、これからです」


「えっ?! そんな話まだしてないよね」


「してないよ。てか妊娠で頭いっぱいで、話する余裕なかったし」


「そうか……結婚するのね」


「えっ、しないの? 当たり前だと思ってた」


「あらあらケンカしちゃダメよ。


そうなのね、いや、すごく若いからさ」


「今の人たちは自由ねぇ。結婚よりも先に子供ですものねぇ」


「今は当たり前ですよ。同棲も当たり前だし」


「私は絶対イヤだわ。ちゃんと順番どおりじゃないと。


動物じゃないんだから」


動物で悪かったな。


黒澤さんの顔から微笑が消えている。


ばばぁ……ちっ。



二人で病院を出る。


この病院じゃなくて、他の病院にしよう。


患者が下品すぎて、黒澤さんには似合わない。



俺たちの子供には、最高の環境を用意してやるぞ。


絶対に、俺みたいに寂しい思いはさせない。




続く