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卒業試験も終わり、後は卒業式を残すのみとなった。
俺は相変わらず黒澤さんを束縛し続け、
毎日毎晩、監視し続けた。
そう、監視!
その言葉がピッタリなくらいに。
黒澤さんが一人で配達に行くときは、
何分かおきに電話かメールをした。
アイツと話す時間なんて与えない。
携帯電話も、毎日何回もチェックしていた。
アイツからのメールや着信は、一回も見た事がない。
俺がチェックしているのに気付いて、削除しているのか?
不安と不信感が募れば募るほど、激しく黒澤さんを抱く。
肌から伝わる体温とあふれ出す体液と漏れる吐息と。
目の前にある体しか、信じられない。
俺が激しさを増せば増すほど、外れていく視線。
俺を見ない女。
こっちを見て欲しくて、動きを止める。
体だけの反応でとろりとした目が、俺を眺める。
眺めているだけで、見てはいない。
その目の中に、俺を入れてくれ。
そうして微笑んでくれ。
初めて会った時みたいに、ふんわりと包んでくれ。
その為には、どうすればいい?
沸き起こった新しい不安が、華奢な体を突き上げ、舌を奪う。
ぐったりとベッドに沈む、白い肢体。
月明かりが眠った横顔を照らす。
光を反射するガーネット。
本当にしたいのは、こんな事じゃないんだ。
ただ、前みたいに、笑って過ごしたいだけなんだ。
ごめんね、黒澤さん。
もう、何を信じていいのかも、
どうしていいのかも分からなくなっていた。
続く