30


卒業試験も終わり、後は卒業式を残すのみとなった。


俺は相変わらず黒澤さんを束縛し続け、


毎日毎晩、監視し続けた。



そう、監視!


その言葉がピッタリなくらいに。


黒澤さんが一人で配達に行くときは、


何分かおきに電話かメールをした。


アイツと話す時間なんて与えない。


携帯電話も、毎日何回もチェックしていた。


アイツからのメールや着信は、一回も見た事がない。


俺がチェックしているのに気付いて、削除しているのか?



不安と不信感が募れば募るほど、激しく黒澤さんを抱く。


肌から伝わる体温とあふれ出す体液と漏れる吐息と。


目の前にある体しか、信じられない。


俺が激しさを増せば増すほど、外れていく視線。


俺を見ない女。


こっちを見て欲しくて、動きを止める。


体だけの反応でとろりとした目が、俺を眺める。


眺めているだけで、見てはいない。


その目の中に、俺を入れてくれ。


そうして微笑んでくれ。


初めて会った時みたいに、ふんわりと包んでくれ。


その為には、どうすればいい?


沸き起こった新しい不安が、華奢な体を突き上げ、舌を奪う。



ぐったりとベッドに沈む、白い肢体。


月明かりが眠った横顔を照らす。


光を反射するガーネット。



本当にしたいのは、こんな事じゃないんだ。


ただ、前みたいに、笑って過ごしたいだけなんだ。


ごめんね、黒澤さん。



もう、何を信じていいのかも、


どうしていいのかも分からなくなっていた。




続く