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「DVD、見た?」
マユからの電話。
「ああ」
「嘘じゃないって分かったでしょ?」
「うん」
「それでどうするの?」
「どうもしない」
「え?!」
「どうもしない。俺は黒澤さんの傍にいる」
「はぁ?!」
「アイツとの事は、黒澤さんとアイツの二人の事であって、
俺は関係ないからさ」
「バ、バカじゃないの?! 何にもしなかったら、絶対別れないわよ?
二股かけられて平気なの?!」
「平気じゃないよ。でも、二人の事は二人で解決してもらうしかないだろ」
「……なんて暢気なの。イラッとするわ」
「マユ……もしかして俺の事心配してるの?」
「! し、心配なんかしてないわよっ」
ブツッ!
切りやがった。
変なヤツ。
「大輔君、早くツリー片付けて」
「はーい」
店へ駆け込む、ああ寒かった。
クリスマスが終わった途端、正月飾りが店頭を飾る。
バーネットだって例外じゃない。
年末はいつにも増して忙しい。
これが30日まで続くのだ。
学校が休みになって、開店から閉店までバーネットにいる。
一日中、黒澤さんといられる。
黒澤さんの耳には、ガーネットのピアス。
目に入る度に、石の硬さと耳たぶの柔らかさが、舌に蘇る。
お客様が途切れた午後、遅い昼食。
俺が作った弁当を二人で食べる。
黒澤さんが仕入れに行ってしまい、
一人で暇を持て余してしまったので、弁当を作ってみた。
「正月はどうするの?」
「実家に戻るわ」
「実家どこだっけ?」
「福岡」
「九州?」
「そう」
「色が白いから、北の方かと思ってた」
「違うのよー。これチーズ入ってるの? 美味しい」
オリジナルレシピのチーズ入り卵焼きだ。
そうか、黒澤さんは実家に帰るのか。
俺どうしようかな。
家で一人で過ごすか……。
どうせお袋は帰ってこないだろうし。
「いつ戻ってくるんですか?」
「3日には戻ってくるわ」
オーナーは電話で注文を受けている。
「俺、寂しいな」
「お土産買ってくるから。明太子美味しいのよ」
「明太子かぁ」
「明太子でご飯とか、パスタも美味しいよ」
「早く食べたいなぁ」
まだ行った事のない土地。
黒澤さんが育った土地。
どんな所なんだろう?
俺は、そんな事を考えていた。
マユが言った「暢気」という言葉は、当たっていた。
黒澤さんの言葉を、鵜呑みにしていた。
続く