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「携帯の中には、妻の幸せは入っていない」


離婚した芸能人が、テレビで騒いでいたのを思い出す。


そうかもしれない。


俺の幸せも入っていないのだろう、黒澤さんの携帯には。


それでも、真実を知りたい。



黒澤さんは、アイツと別れてなんかいなかった。



じゃあ、俺は?


俺は何?


黒澤さんの傍にいたいと願ったのは、俺だ。


願いが叶って、嬉しかった。


けれど。


アイツと付き合い続けるのに、どうして俺を傍に置くのだろう?



黒澤さんがシャワーを浴びて出てくる。


体から湯気が立ち上る。


綺麗な足のライン。


長い髪をタオルで押さえる。


滴り落ちる水滴。


無造作にビールを開けて、口に運ぶ。



誰にも渡したくない。


俺の、女。



後ろからそっと抱きしめる。


温かい体。


髪からシャンプーの香りがする。


「どうしたの?」


「……なんでもない」


「体冷えてるよ。シャワー浴びておいで」



熱めのシャワーを頭から浴びる。


頭がまとまらない。


俺とアイツ、いっぺんに付き合えるほど、黒澤さんは大人なのか。


何故、いっぺんに付き合う?


アイツと別れられないのか?


それとも、俺がまとわりついてるだけなのか?


どうして、何も言わないんだ?


考えても考えても、分からない。



「ねぇ」


「ん?」


「クリスマス、ここでパーティしよう」


「パーティ?」


「そう、二人だけだけど」


「二人で?」


黒澤さんが微笑む。


綺麗な唇。


「俺チキン焼くよ」


「え? 作れるの?」


「料理は結構出来るんだ。何しろ独り身が長いからさ」


「じゃあ私はサラダでも作ろうかな」


「それ料理のうちなの?」


「美味しいの作ればいいでしょう?」


軽く睨む目が、艶めく。


「ツリーも飾ってもいい? 小さいの」


「いいけど?」


「楽しみたいんだ。好きな人と過ごす初めてのクリスマスだからさ」


「……いいよ」


俺を見つめる優しい目。


「俺の、18回目の誕生日でもあるんだ」


「うん、知ってる」


「一緒に、祝ってくれる?」


「……うん」



嬉しくて、キスを繰り返す。


黒澤さんが、どう思っていても構わない。


傍にいてくれれば。


ずっと、いつも。



胸元に、きつく吸い付く。


甘い悲鳴が上がるくらいに。


俺からの挑戦状。



アイツなんかに、黒澤さんは渡さない。




続く