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本当に、そうなのか。


天国から地獄に叩き落とされた気分で、バーネットに入る。


黒澤さんは、いつもの通り、クールな顔で仕事をしている。


本当に?



プレゼントを買って浮かれて歩いていた俺の前に、


マユが現れた。



白い顔が、寝不足なのか更に青白くなっていた。


目が落ち窪み、黒目だけが力を増している。


マユ……。



ガサガサの唇から、棘だらけの言葉が零れる。


「私親切だから忠告しといてあげる。黒澤さん、男いるわよ」


「知ってる……もう別れたよ」


「確かめたの?」


確認なんかしてなかった。


「切れてないわよ、男と」


「何でマユが知ってんだよ?!」


「……聞きたい?」


「ああ」


勝ち誇った顔で話し始める。


「この間見たのよ。黒澤さんと男が二人で歩いてるの。


その後、駅前のホテルに入って行ったわ」


「つけたのかよ?」


「そんな事どうだっていいでしょ?!」


まさか。


俺と付き合い始めたのに、何でまだアイツと?


「嘘だ」


「嘘じゃない」


「嘘だ!」


「振った女は信用出来ないって言うの?!」


「……」


「黒澤さんに聞いてみるのね。まだ付き合ってるのかどうか」



頭の中に、マユの言葉がグルグル回る。


はさみを落とす。


水の入ったバケツをひっくり返す。


客とコミュニケーションが取れない。


ぼんやりと、黒澤さんを見てしまう。



本当に?


本当にアイツと会っているの?



「大輔君、テストの点数でも悪かった? 今日何だか変だよ?」


「いや、大丈夫です」


「ならいいけど。具合が悪いとかなら言ってね」


暢気なオーナーが気を使うほどに、集中力がない。


黒澤さんは、いつものように白い横顔を見せている。



いけないと思いながら、その夜、黒澤さんの携帯を手に取った。





続く