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黒澤さんと、二人で歩く。


以前のようにはしゃぐ事もなく、静かに。


月が柔らかな光で照らす歩道。


濃い影が、足元で枯葉の音を立てる。



アンティークなアパートメントの階段。


音を立てないように気を付けて歩く。


以前は何も考えずに上っていたのに。


後ろ手で閉めるドア。


ドアの隙間から、秘密の空気が漏れ出す。



ほどいた髪から、花の香りが微かに漂う。


キャンドルの光に浮かび上がる、柔らかな曲線。


掌から伝わる温もり。


重なる鼓動。


体の奥からから押し出される声が、俺の鼓膜を震わせる。


全てを逃さないように、五感が研ぎ澄まされる。



どうしたら、黒澤さんは悦ぶ?


ぎこちない手が、探検の旅に出る。


その動きに、敏感に反応する肌が泡立つ。


泡立ちが俺にも伝染する。



もっと。


もっと。



一瞬不安になって、目を覗き込む。


潤んで大きくなった瞳が、俺だけを映す。


お互いの目の中の自分を見つめて、


口移しで喜びを伝える。



大きな波が、二人を攫う。


熱を持った体を、シーツの海に浸して冷ます。


月光に照らされた胸元に、季節外れの桜の花びら。


無邪気な悪戯。



そうして二人は、子供のように絡み合ったまま、


眠りにつく。




続く