君を失って
僕の時間は止まるのかと思っていた
でも
そんな事はなく
君と出会う前の日常に戻った
仲間たちに合わせて笑い
お腹が空いたら何か食べて
喉が渇いて水を飲み
空を見上げる
全て上の空
物足りない
味気ない
それでも
僕は生きている
不思議と悲しくはなくて
僕は薄情だったのか
そんな自分にウンザリして
一人で君と歩いた場所を歩く
波の音に混ざって
頭の後ろからカラカラという音が聞こえる
椰子の木の陰から
アイスクリーム屋のベンチから
いつもミネラルウォーターを買っていた店から
夕日を眺めた岩場の陰から
ふいに君が現れ
そして消える
出来の悪い映写機が
僕の頭の後ろで回り続ける
カラカラカラカラ
君の姿を一目見たくて
幻でもいいから
会いたくて
僕はフラフラと歩き続ける
波打ち際を歩く白い足
風に煽られるスカート
乱される長い髪
金色に染まった唇
いつも冷たかった手
カラカラカラカラ
会いたい
カラカラカラカラ
今すぐ
カラカラカラカラ
そして僕はまだ
カラカラカラカラ
泣けない
『映写機』
了