君の腕に繋がれた点滴が

ゆっくりと黄色の雫を垂らしている

昨日の疲れが出たのか

くったりとベッドに沈む体

黒目がちの目だけが

別の生き物のように光を放つ


次の外出には

白百合の咲く場所へ行こうと約束した

太陽の下

咲き誇る白百合の群生

その一帯が光を反射して

ほわんと白くてとても綺麗なんだ

君にも見せたい


窓際に増えていく白百合

君の体は一進一退を繰り返し

辛さに耐えている君を

僕は見ている事しか出来ず

それでも傍にいたくて

元気付けていたくて

祈るような気持ちで

毎日一本の百合の命を奪う


「今日は何だか気分が良いの」

そう言って

気持ち良さそうに窓からの風を受ける

何だかホッとして

二人何も言わずに青空を見上げる

ゆっくりと

時間と雲が流れていく


ベッドの周りで

医者や看護婦が慌しく動き回る

たくさんの管が体に括り付けられ

口元には酸素マスク

傍らにはご両親が体を固くしたまま

僕は何も出来ず何も考えられず

ただじっと君を見ていた


昏睡状態だった君が

意識を取り戻した

僕はベッドの傍に行き

君の手を両手で包む

氷のように冷たい手

こんなに冷たい!


「……ずっと……傍に……?」

「うん、いたよ」

「……ありがと……忘れてね、私の事……」

何故?

首を横に振る

ふっと笑う君

君の手の重みが

急に僕の手にかかる

枕元の機械がピーっと音を立てて

2本の直線を描く


口元に微笑みを浮かべたまま

眠るように穏やかに君は


逝った



『微笑み』