夜明け前から砂浜を歩いて

君の目で島を眺める


薄暗い空が

徐々に明るさを増し

朱鷺色に雲を染め

太陽が海から顔を覗かせると

空は次第に青く

海はきらめきを増す

明けの明星は気配を消していく

気温は急激に上昇し

白い砂を熱く焼き始める

海風が生まれたての空気を運び

僕はそれを胸いっぱい吸い込む

不用意に口から漏れないように

君の元へ急ぐ


僕の島はこんなに美しかったのかと

改めて感動する


途中で見つけた

咲いたばかりの白百合

君に似合いそう


部屋に入ろうとして

申し訳なさそうに

お母さんから告げられた言葉

「会いたくないそうです」

……どうして?

「分からないんです」


会いたくない

君が言う

会いたい

僕は思う

帰る気にはなれなくて

病室の前で座り込む

邪魔になるけど

1mmでも近くにいたくて

ドアの隙間から漏れてくる

君の気配を伺う


手にした百合が

甘い匂いを放つ

窓から差し込む日差しに反射して

白く浮き上がる百合

初めてデートした日の

ワンピースを思い出す

風にはためく白いスカート

海風とは違う香りがした


そんな事を考えている間に

太陽は百合を白く染め

紅く染め

蛍光灯にその役目を明け渡して

沈んで行った


何となく元気がなくなってしまった百合を

捨てる気にもなれずに

そのまま病院を後にした


「また、明日」



『待機』