小さな島の事だから

名所なんかはあまりなく

彼女を案内するには

あまりにも知識がなく

ただただ

白い砂浜に二人で足跡を付け続けた


君は退屈する事もなく

歩きながら輝く海を眺め続け

「本当に綺麗ね、海の色がどんどん変わっていくわ」

と嬉しそうに笑う

ほっとした僕は

君にもっと喜んで欲しくて

「太陽の位置が変わるたびに、海の色も変化するんだ。

日没の時は最高に綺麗だよ」

と添乗員のように説明をする

君は好奇心いっぱいの目で僕の説明を聞く

「どこから見る日没が一番綺麗?」

「お気に入りの場所があるから、夕方に行ってみよう」

君の目が更に輝く

僕には眩しすぎて思わず目を逸らす

太陽を見た後は残像が黒く残って

目が見えなくなるから


いつもは感じた事のない

日差しの強さに不安になる

白い日差しに溶けて

君がいなくなってしまいそうな気がした


日焼けして

君の白い顔に赤みが差してる

顔に当てたミネラルウォーターの瓶

ひんやりして気持ちいい

いくら冷やしても

君が傍にいたら

僕の顔の赤みが取れる事はないだろう


瓶から水が滴り落ちて

砂浜に黒いシミを付ける

そのシミが暑さですぐに干上がる

太陽は容赦なく島を照りつけるから

日陰に避難しよう


昼食を食べて

好きなアーティストのCDを試聴したり

ブルーシールアイスクリームのトリプルを食べたり

スタイリストみたいに洋服を選んでみたり

カフェでアイスコーヒーを飲んだり

これってデートだ

ツアーコンダクター失格


そうして砂浜から離れ

岩場の上へ

ここが僕のとっておきの場所

もうすぐ海に太陽が落ちる

海にその身を沈めながら

空を赤く焼き

海に赤いインクを撒き散らす

赤は黒に近くなり

波は金色に姿を変える

沈没する間際

目に見える全てのものは

黒と金に染まる

空も雲も

海も波も

僕も君も

太陽自身も


ここから見る日没は

いつも僕の心を涙ぐませる


君はまっすぐに太陽を見つめ

黒い瞳に金色の影が映る

君の目にも黒いもやがかかって

何も見えなくなるから

きっと目を閉じるだろう

そうして

カラカラに乾いた島の空気とは正反対に

自分の心が潤っているのを感じるだろう

その時初めて僕たちは

ツアーコンダクターと旅行者の関係を止める事が出来る


強い風に押されて

よろけた君を助けようと伸ばした手が

君の手を握る

ひんやりとした手

僕は汗をかくほど熱いのに


太陽が送った熱風に煽られて

理性が吹き飛びそうになるのを抑えながら

また君を誘う


「明日もまた会える?」


『ツアーコンダクター』