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遅れた英雄

分校が制圧される30分ほど前のことだ。



桐山和雄がイングラムM10を放ち、田沼健二と奥田が銃弾を受けて倒れた。とどめを刺そうと桐山はワルサーを取り出して、それを健二に狙いを定めて撃とうとしたときだった。



パァン!


1発の乾いた銃声とともに、桐山の胸から鮮血が舞った。そして、表情を崩さないまま桐山は倒れた。健二が驚いて後ろを振り返ると、そこには、ベレッタM92Fを左手で構える男がいた。彼の右隣には、体格がよく、ショットガンのレミントンM31RSを構える男。左隣には、これまた体格がよく、この戦場には不釣合いなモップの柄を持った男がいた。



「おい…本当に死んだのか?」


真ん中の男がそう呟くと


「確実に胸に着弾している。生きてはいないだろう」


と、右隣の男が言葉を返した。すると


「と…とにかく、あそこの2人を助けよう」


と、左隣の男が言った。そして、3人は2人に近づいていった。


「大丈夫か?」


そういいながら真ん中の男は健二に手を差し出した。健二は手を握りながら「ありがとう…ところで、あんたらは?」と聞く。すると、真ん中の男は頭をかきながら答えた。


「俺か?俺は三村信史だ。右の奴が川田章吾。左の奴が杉村弘樹だ。」


と、三村と名乗る男は一気に喋った。そして、間髪なく「信じてもらえないかもしれないが…俺たちは…」と、言ったところで、奥田が「クローンやろ」と言った。そして、少し驚いた顔をしながら、三村は「知ってたのか」と言った。



と、ここで奥田がある疑問を抱いた。そして、それが無意識のうちに声に出てしまったいた。


奥田「なんで…お前らは俺らを助けたんや…?」


そして、その質問に三村が返す。


三村「助けた?何を助けたんだ?」


この言葉に、健二が返す。



健二「だって…さっきの桐山ってのもクローンだったんだろ?なんでその仲間を殺してまで俺たちを助けたんだ?」


すると、川田がこの質問に答えた。


川田「それはな、あいつが憎かったからだ」


憎かった?と健二が返した。



川田「俺たちはな、桐山によって、殺されたり、または、桐山によって深い傷を負って、死んだんだ。それなのに、憎いと思わないほうがおかしいんじゃないのか?それに、別にお前達を助けたわけじゃない。俺たちはクローンとして生まれ変わったときに、昔あった反政府思想も取り除かれたらしくてな、今じゃあ政府信者になってあしまった。だから、お前達を殺す」


この言葉に、健二は震え上がる。


奥田「一難さってまた一難やな…」



そして、川田がレミントンを構えるのと同時に、今度は三村達の後ろから銃声が聞こえてきた。そして、銃声が止んだと同時に、3人は息絶えていた。



「大丈夫か!?」


健二と奥田を助けた救世主である男が健二と奥田に歩みよってきた。


健二「あんたは…?」


健二の問いに、男は答えた。


「俺か?俺は名乗るほどのものじゃないさ。しいていうなら…ワイルドセブンの一員だ」














乱入者

礼二「ちっ…葵の馬鹿が…」



礼二は今、葵が来来の罠にかかったことについて苛立ちを感じていた。普通に考えればこれくらいの作戦は見破れたはずだ。そう思っていた。



そのとき、礼二の携帯に連絡が入った。



礼二「ん…?いったい誰…!もしもし…総統様…」



その電話の主とは…この国のトップであるお方。代26代目総統、松谷直樹だった。



松谷直樹…IQ200の天才。8歳の時に自分の父であり、25代目総統、松谷秀樹が病気で死亡。そして、若干8歳で総統を受け継いだのだ。




直樹「礼二さん…?何をしでかしてるんだい?」



直樹が冷たい声で礼二に言い放つ。そのすさまじい威圧感に、礼二は「すいません…」と、か細い声で言うのが精一杯だった。


直樹「で…今のところの状況は?クローンの実験はどうなったの?」



礼二「はっ…今は、専門防衛軍の隊長の葵が、木村秀夫と遭仙を殺害。しかし、来来という女に追い詰められています。クローンの実験は成功しました。桐山和雄が、奥田教諭と生き残りの田沼健二を殺したは…」



そこまで言って、礼二は言葉を失った。まだ奥田がつけている首輪の生存反応が出ているのだ。(転校生の首輪は、盗聴器と生存反応のパルスのみついている。)


しかし…と礼二は考える。奥田は、共和国軍刀と弓しか与えていないし、田沼もムラマサしか与えていない。そして、桐山にはイングラムM10とワルサーPPK9mmを与えている。そして、桐山が2人を追い詰めて、銃声が1発…!



そう。桐山が2人を始末したとすると、銃声は2発聞こえてくるはずなのだ。しかし、銃声は1発…礼二は最大のミスを犯していた。この短時間でいろいろなことがおこったせいだろう。礼二の集中力は0に等しかった。



じゃあ…と、また礼二は考える。あの銃声はいったい誰の銃声…?そこまで考えたとき、礼二は後頭部に強い衝撃を受けたかと思うと、意識が途切れた。電話から聞こえる「礼二さん?どうしたの?」という声も、もはや礼二には聞こえていなかった。









「ボス、任務は完了した」



「…ご苦労。分校は完全に制圧したか。なら、最後の仕事だ。生き残っている生徒を全員探すぞ。章吾の情報によると、生き残りは11人だそうだ。分校に皆向かってるらしいから、1人はここにのこり、残りは、万一の場合のためにこの島を探すぞ。俺も時期に島につく。それまで…誰も死ぬんじゃないぞ…」



そういって無線機を切った男、七原秋也は、目の前に見える島をずっと見ていた。心の中で、みんなの無事を祈り。





作戦

来来はバケツに溜まった秘策を持つと、農具倉庫の2階に走っていった。カンカンと階段の金属音が木霊する。


その姿を見た葵も2階に向かって走りだした。


来来は2階につくと、トラクターの陰に隠れる。それと同時に葵がやってきた。葵は来来を探す。その隙に来来が姿を表して、葵に向かってコルトパイソンを撃つ。それを葵はとっさにしゃがんでかわした。髪がこげる匂いがした。おそらく頭を掠めたのだろう。



しかし、葵は怯むことなく来来にブローニングを撃つ。それを来来はトラクターに隠れてやり過ごした。



来「いやっ…こないで!」


来来はそう叫びながら葵にコルトパイソンを乱射する。もっとも、これは来来の作戦の一部であるということは葵は知らない。



葵は嘲るように笑いながら来来に近づいてきた。来来は相変わらず「こないで!」を連発している。



そして、葵が来来のいるトラクターに近づき、上から来来を見下ろす形になった。


来「やめて…」


葵「あら?さっきまでの強気はどこにいったのかしらね?」


葵は嘲りながら来来に話かける。そのとき、初めて葵に少しだが隙ができていた…銃を下ろしている。



…やるなら…今よ!



そう心で思うと同時に、来来の秘策が葵の体全身にかかっていた。これには葵も驚いたようだが、遊びはおしまいというような顔で、来来に銃口を向けた。しかし…




来「あなたにその銃が撃てるかしら?」


来来が意味深な発言をする。葵が「どういうこと?」とでも言いたげな顔をしていた。すると、葵の心を読んだかのように、来来が言った。



来「今、あなたを生かすことも、殺すことも、私の自由になったというわけよ。あなたの体と銃にたっぷりかかった液体のおかげでね…」



そういうと、突然葵の鼻にツンとくる匂いがしてきた。その臭いをかいだ瞬間、葵はこの液体を理解した。




…この匂い…ガソリンだわ…!



来「ためしにその銃を撃ってみたら?私も死ぬかもしれないけど…あなたも火だるまになるわ」




葵は完全にやられたというような顔をしていた。こんなところに都合よくガソリンがあるわけがない。つまり、葵はまんまと来来の罠にかかってしまったのだ。人を追い詰めるとどうしても出てしまう余裕…人間の心理を見事についた作戦だった。



葵「やられたわ…もし、このまま私があなたを撃たなかったらどうなるの?」



来「そうね…そのときには私があなたに引導を渡すわ。これ、私は煙草を吸わないんだけど…お守り代わりだって…このライターを…遭仙がくれたライターで、あなたに引導を渡す」



そして、来来がライターを投げようとしたときだった。乾いた銃声とともに、来来の右肩から血が出ていた。



…いったいだれが?この銃声は葵のもってる銃じゃない…そう思っていると、もう1人の人の気配を感じた。そっちの方向に目を向ける。



月明かりに照らされた、1人の女子生徒がそこに立っていた。




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