三重のセラピスト夫婦が奏でる♪心体魂の三重奏 -32ページ目

まちのスープ屋さん

虹 かやです




どこにでもありそうな街の

似たような家が立ち並ぶ住宅街の一角に

そのスープ屋はありました




何種類ものスープを作る男の腕は確かで

無骨な見かけによらず繊細な感覚を持ち

日々さらにおいしいものを提供するため様々な努力を惜しみませんでした


メニューにあるのは

各国を代表する有名なものばかりでした



けれど

そういうスープならどこにでもあるファミリーレストランでも食べられるし

ほんとうにおいしい物はだれかが評価するはずだと思っている人は

そんな所に立派な腕をもつ料理人がいることに気づきませんでした



どうしてもスープが欲しくなったけれど

ファミリーレストランでは物足りないと思うある人が

家から近いからとその店を訪れました


ほんとうに美味しいのかどうかその人は自分ではわかりません

おいしい気もするけど

ひと言美味しいと言ったが最後

いろいろ勧められたり

また来なくてはならなくなるような

何かをされるのではないかと思いながら食べました


そんなだったのでリラックスして食べるどころか

どこで修業したのかとか

食材はどこで買っているのかとか

あげくにはどんな鍋を使っているのか

ガス屋はどこかなど

仕事に精を出す男にあれこれ話しかけました


そんな調子で何度か店にきたけれど

結局 街でこの店の噂も耳にしないし

自分の舌ではおいしいのかどうか判断できないまま足は遠のきました


数年経ったある日

あるレストランでそのスープ屋の評判をききました


男はオリジナルスープを作り

国のあちこちで評判になっているのだそうです


ぜひ一度行かれたらいいですよと

レストランのオーナーシェフが勧めてくれたので

その人は言い返しました


そのスープ屋ならずっと前から通っているわ



今では予約なしでは入れないほど評判になっているスープ屋を

久しぶりに訪ねると

おかみさんはそのお客さんのことをよく覚えていました


オリジナルスープを食べて満足したので

帰りがけにおかみさんに伝えました


ご主人は随分腕をあげられましたね


おかみさんはほほえみ ていねいにお礼を言いました



でもおかみさんは心の中で思っていました

うちのひとは腕を磨き続けてはいるけれどあの頃から一流なのさ

変わったのは彼の持てるものをつぎ込んだオリジナルメニューを作ったことだよ

そして本当の味のわかる人に出会ったこと



こわもてに見られるけれど実はほんとうの優しさを知っている男の隣で

にこにこ笑っているこのおかみさんが実は曲者だと知る人はごくわずか



               
 
                             おしまい