震災ストレス「たこつぼ心筋症」注意 高齢女性、突然死も
産経新聞 3月27日(日)9時14分配信

 東日本大震災の被災者に「たこつぼ心筋症」と呼ばれる心臓病の発症が懸念されている。強いストレスを受けた後に心臓の筋肉が収縮しにくくなり、正常に血液を送り出すことができなくなる病気で、平成16年の新潟県中越地震の際、中高年の女性被災者に多く発症し注目されるようになった。専門医は「今後、発症例が増えることが予想され、注意が必要」と指摘している。

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)心臓血管内科部門の野々木宏部門長によると、たこつぼ心筋症の発症には突然の大きなストレスが関与しているとされ、自律神経が極度に混乱し、心臓の一部が硬直して動かなくなってしまうという。「心臓の筋肉が気絶したような状態」(野々木医師)で、動きの悪くなった心臓の形がたこつぼのように見えるため、この病名がついた。

 肉親や友人の死、激しい口論などさまざまなストレスによる発症例が報告されているが、大規模災害時に発症するケースが多い。阪神大震災の際には各地の病院から発症報告があり、同センターでも1例を診断したという。

 注目されるようになったのは新潟県中越地震のときで、相沢義房・新潟大医学部教授(循環器内科)によると、地震発生後の2~3週間で被災地で30人近い患者が発生、ほとんどが60代以上の女性だった。東日本大震災の被災者の発症例も報告されているという。

 症状は、突然の胸の痛みや圧迫感、呼吸困難など心筋梗塞(こうそく)に似ており、野々木医師は「放置すれば、心不全や不整脈を起こし、突然死につながりかねない。治療すれば、心臓は正常な状態に戻る」と強調。東日本大震災の被災者にも今後、発症が増えることが懸念され、「症状があれば我慢せず、すぐ循環器の専門医を受診してほしい」と呼びかけている。