大仏マンのお遊戯 -2ページ目

大仏マンのお遊戯

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観覧車にも乗り終わり、一同は遊園地を出た。



「いや~~楽しかったね」

「そうだね……」



満足そうな万理奈とは裏腹に、あからさまに元気のない翠だった。



「そんなに紅輝君と観覧車乗りたかったの?」

「当たり前でしょ‼︎密室に二人っきり‼︎ロマンチックな夜景を眺めていたら、何があったって不思議じゃないのに‼︎なのに何で、あいつが一緒に乗ってるんだよ」



そう言って翠は、キッっとリオンを睨んだ。
そんな翠に紅輝は謝りながら近付いた。


「ごめんごめん。まぁ、そんな間違いは起きないと思うけど。でも、お詫びに案内したいところあるんだ」

「ほんと⁉︎行こ行こ‼︎」


紅輝からの誘いを受けて機嫌が直った翠は、紅輝の腕を引っ張って行ってしまった。


「あっ、皆も付いて来てね‼︎」


そう言った紅輝の姿は翠に引っ張られ、すでに遥か彼方に小さくなっていた。



「翠ちゃんって、ほんとに分かりやすいね」

「えぇ。アタシ達も行きましょうか」



そう言って4人も二人を追いかけた。














「うわ~綺麗」


紅輝が連れて来たのは、夜景が見える海辺の公園だった。


「いい所だと思わない?」

「ねぇ、あっちの方の夜景も綺麗だよ‼︎」


翠は紅輝を引っ張って別の場所に連れて行った。




「へぇ、こんな所があったなんて知らなかったなぁ。リオンは知ってた?」

「いや、全然」

「そうだよね。リオンこういうの興味なさそうだし」

「お前の方こそ、こんな所無縁そうだけどな」

「ねぇ、馬鹿にしてるの?」



そんな風にリオンと万理奈は、笑いながら冗談を言い合っていた。

その様子を見た美佳子が、小声で謙二に話しかけた。



「ねぇ、あっちの方観に行ってみない?」

「……そうね。ここはお邪魔みたいだし」



謙二も何か気付いた様子で、二人でそっとその場を離れた。








「でも、本当に今日は楽しかったなぁ~」

「それは良かったな」

「ジェットコースターに皆で乗れたし、話題のショーも観れたし。あと、お化け屋敷もね」



万理奈はリオンに向かって笑って言った。



「こんな綺麗な夜景も観られたし、高校最後に本当に良い思い出が出来た」



そうやって夜景を観る万理奈の横顔は嬉しそうでもあり、何だか寂しそうでもあった。



「これで皆、バラバラになっちゃうんだね。リオンも日本離れちゃうし……」

「いや、親の所行くの少し延期した」



その発言に驚いた万理奈は、慌ててリオンの方を向いた。


「えっ、何で⁉︎」

「ちょっと紅輝の気まぐれに付き合う事にした」

「何それ。でもまぁ……日本に居るなら良いか」


そう言って再び夜景を観た万理奈の横顔は、少し微笑んでいた。

するとリオンはカバンから小さな紙袋を取り出し、照れ隠しか万理奈の顔を見ずに万理奈の前に出した。



「ほらよ」



突然目の前に出された紙袋を受け取った万理奈は、戸惑いを隠せない様子だった。



「何これ」

「……俺、あんまりこういうの分からねぇけど似合うかなって。本当は前と同じものがあれば良かったんだけどな」

「えっ?」


万理奈が紙袋を開けると、中には水玉模様のシュシュが入っていた






紅輝が電話でわざわざ言って来た事はこの事だった。

仲直りのきっかけに無くなったシュシュを買ってプレゼントしたら良いのではないかと言い出したのだった。リオン自身、万理奈のシュシュの事はずっと引っかかっていたし、紅輝の提案に乗る事にした。

そして、どうせならシチュエーションも良いところが良いだろうという事で、先ほどの観覧車の中で、ここに連れてくることを話していた。










「何で……」

「お前にとってシュシュって辛い思い出なのかもしれない。けど、捨ててもいい思い出だとはどうしても思えないんだ。捨ててしまったら、親父さんがそれまでお前に注いでくれた愛情も全部無かった事になるような気がして。居なくなったのは事実だけど、お前の事を本当に大切に思っていた事は変わりないだろ」



親との思い出がないリオンからすれば、辛い思い出も、悲しい思い出も大切なものに思えた。



「だからもう忘れるなんて、そんな寂しい事言うなよ」



リオンは万理奈の方を向いて、優しく言った。

それを聞いた万理奈の目から、ポロポロと大粒の涙が溢れた。



「おっ、おい‼︎何も泣く事ないだろ」



まさかの事に、今度はリオンが戸惑ってしまった。


「グスッ……だって……優しすぎるから……何でリオンは、こんな優しくしてくれるだろうって……」

「そりゃ……ほっとけねぇから」



リオンは恥ずかしそうに言った。



「初めて会った時からだ。人の間合いに、容赦なく入って来るし。何考えてるのか分からないし。こうと決めたら誰の言う事も聞かないし。すぐ怒るし。気が付いたら、機嫌直ってるし。最初はウザくて関わりたくなかったけど、なんかほっとけなくて。呆れる事も多いけど、一緒に居て飽きない。お前のお陰で謙二達にも出会えた。俺は家族と過ごした事がなかったからわからないけど、家族ってこんな感じなのかなぁって」



リオンの話を聞いていた万理奈はいつの間にか泣き止み、今度はポカーンとこっちを見ていた。



「別にお前と家族になりたいとか、そういう事じゃなくて‼︎ただ、もしこの先も一緒に居る事があるなら……それはそれで楽しいかなって」



リオン自身も、自分が何でこんな話をしてるのか分からなかった。分からなかったが、言葉が溢れてきてしょうがなかった。

そして、溢れ出る言葉を紡いでいく内に、リオンは自分の中のある感情に気が付き出した。



「だからお前が嫌じゃなかったら……これからも一緒に居てくれないか?」

「それって……つまり……」

































「……要するに、お前のことが好きだから、これからも俺の傍にいて欲しいって事だよ」






















リオンに告白された万理奈は、しばらく固まったままだった。



「うぅっ……うわぁぁぁぁぁぁん‼︎‼︎」



そして、再び泣き出した。



「おいおい、そんなに俺の事が嫌いか」

「馬鹿っ‼︎馬鹿リオンっ‼︎嬉しいんだよ‼︎嬉し涙だよ‼︎そんな事も分からないのか‼︎もう嫌い‼︎大っ嫌い‼︎大っ嫌いなくらい大好きだよ馬鹿‼︎うわぁぁぁぁぁぁぁん‼︎」

「やっぱりお前って……変なやつだな」



泣きながら訴える万理奈に、リオンは笑いながらそう言った。












しばらくして落ち着いた万理奈は、再びリオンと夜景を観ていた。



「……でも、意外だったなぁ。リオンから告白してくるなんて」

「俺だって大事なときは告白くらい、ちゃんとする」

「そっか」



万理奈はリオンから貰ったシュシュを手に取ると、髪を横に流して一つにまとめてみせた。



「どう?似合う?」

「まぁまぁだな」

「そういう時は、嘘でも似合ってるって言うの」



二人は笑いあいながら、そんな話をしていた。



「ねぇ。リオンは私の前から居なくならないでね」



万理奈は遠くの夜景を観ながらそっと呟いた。



「居なくならねぇよ」

「本当に?約束だよ?」

「あぁ、約束」

「本当に本当に約束だよ?どっか行こうとしても死んでも離れないから」

「心配するなって」

「約束ね」



二人は夜景を観ながら、お互いに離れないと約束し合った。












「なんか良い感じでまとまったね」



そう言いながら遠くの茂みから紅輝たち4人は、リオン達の事を見守っていた。



「はぁ~あ。何か二人の事見てたら、私も幸せになりたくなっちゃったなぁ。ねぇ、この流れで私たちも付き合わない?」



どさくさに紛れて翠は、紅輝にそう言った。









「うん、良いよ」


「そうだよね。いくら何でもいきなりすぎ……今なんて?」

「だから、良いよって。翠ちゃんの事結構好きだし、何か今日1日一緒にいて楽しかったからさ。さっきのリオン君じゃないけど、翠ちゃんと一緒に居ると毎日楽しそうだし」

「えっ……あっ……えっと…」


あまりの衝撃で翠は喜ぶどころか固まってしまった。

そんな翠は置いておいて、紅輝は茂みから出てリオン達のところに向かった。




「やぁやぁ、リオン君。上手く気持ちを伝えられたみたいだね」

「お陰でさまでな」



リオンと紅輝はお互いにニッっと笑いながら言った。



「リオンから何となく聞いたよ。リオンの事お願いします」

「まぁ、確かに一緒に頑張っていく仲間だけど、俺にもカバーしきれない所もあるからねぇ。そういう時は万理奈ちゃん、君にお願いするね」

「もちろん」


万理奈も笑顔で紅輝に言った。



「ねぇ、ちょっと色々訳わかんないんだけど‼︎えっ?リオンは日本に残るの?紅輝君と何かするの?てか、紅輝君は私と付き合ってくれるの?えっ?えっ?」



やっと動けた翠だったが、未だ状況が掴めていない様子だった。



「まぁ、ひとまず良いじゃないか‼︎さぁさぁ、夜景も楽しんだし、今日はもう帰ろう‼︎」



そう言って、今度は紅輝に腕を引っ張られてる翠を見て、思わず笑ってしまった一同だった。