「ありがとう」
男の子は鉄平に向かってお礼を言った。
「今のお前の行動は決して勇気などではない。力の差が歴然としている中で、向かって行くのは、無謀というのだよ。よく覚えておけ」
鉄平はそう言って、またベンチに戻って行こうとした。
「だが、皆のために自分で行動しようと思ったことは、褒めてやる。その気持ちは、これからもずっと持っておくんだな」
そう言い残して、鉄平はベンチに戻った。
「鉄平が人助けとは珍しいな」
心平はベンチで本を読んでいる鉄平に近づき、話しかけた。
「なんだ、心平か。人助けなどではない。本を読んでいるのにうるさくて邪魔だったから、黙らせただけだ」
「そういやお前、勉強ばっかしてるくせに、昔から喧嘩強かったしな」
心平の言うとおり、鉄平は勉強が出来るだけでなく、実は子供の頃から喧嘩が強かった。だが、他人に興味が無いため、喧嘩をすることがほとんどなかった。ちなみに心平は幼い時から、兄弟喧嘩で鉄平に勝ったことはなかった。
「心平、お前こそ、ここで何をしている」
「何って、八木達と明日の練習するのに、集合時間まで暇だったから、散歩してたんだよ」
「なるほどな。なら、お前も人のこと言えんではないか」
「はぁ?」
「少し前までのお前だったら、ダンスなど自分から絶対にしなかっただろ。そういうことだ」
そう言って、鉄平はまた本を読み始めた。
鉄平に言われて、心平は考えた。
確かに今までだったら、ダンスなんてやろうと思わなかったし、何よりここまでダンスを続けていることが不思議だった。
河川敷を離れ、心平が考えながら歩いていると、目の前に見たことのある後ろ姿を見つけた。
「何やってんだ、弓瀬」
「うわっ‼︎なんや心平か。驚かすなや、もう」
壁の後ろから何かを見ていた真矢は、後ろから心平に話しかけられて、驚いたようだった。
「見てみ」
「あれは……越前か?前に居るのは……亀井?」
真矢が指指す方向を見ると、鋏介と瑞希がいた。