1817年 コーンウォール
ある密使のため森の中の待ち合わせ場所までやってきたネイサン・オリヴァー
任務を遂行しようとしたその時思いがけない邪魔が入り
密会相手に渡すはずの品物を何者かに盗られてしまっただけでなく
心配してあとをつけてきた兄コリンと親友ゴードンを巻き込むことになり、任務も失敗に終わる
3年後
コーンウォールへ向う馬車の中、レディーズ・ガイドを読んでいたヴィクトリアは
居眠りから覚めた叔母から何に夢中になっているのかと聞かれ、すばやく本を隠しその場を取繕う
最近ロンドンで話題になっている本を読んでいることを叔母に知られたくなく話題を変え
不便な馬車の旅がもうすぐ終わろうとしていることに安堵する叔母に同感の彼女は
普通なら華やかな社交シーズンが始まる寸前のこの時期に、居心地のいいロンドンのタウンハウスから
わざわざコーンウォールの片田舎まで出てくることなど考えられなかったが
今回父親からの頼みを聞いた時、過去に受けた屈辱の復讐を果たす絶好の機会だと思いつき
普段頼みごとなどしない父親が強く望んだことも珍しかったため、不便な旅を我慢することになるが
これを逃せば復讐の機会もないと考え、ドクター・オリヴァーへの復讐計画を綿密に練っていた
日にちをずらせてと頼んでみても父親は決して譲らず、何故この時期なのかという疑問も残ったため
父親の意図がわからないと言うヴィクトリアに、叔母のデリアが兄の気持ちを推測して
ロンドンですでに2人の求婚者がいる娘に、父親としてもっと範囲を広げて選ばせたいと
これから行くオリヴァー家の兄弟をヴィクトリアのお相手と考えているのではないかと言い
花婿候補として長男のサットン子爵と弟で医者のネイサン・オリヴァーの名を挙げる
ネイサンの名前を聞いて心の動揺を表に出さないよう必死で努力するヴィクトリア
18歳の誕生日を迎えたばかりの彼女が、ネイサンと衝撃的な出会いを体験し
彼こそ運命の人と心揺さぶられたあと、今回の復讐劇を思いつくほどの失望を味あわされたため
不幸な結婚を経験していた叔母デリアから、幸せな結婚をして欲しいと言われた時には
もともと両親も愛情から結婚したわけでもなく、結婚をおとぎ話のように美化していた少女の頃とは違い
所有財産を含めて家柄や称号などで結婚が決まると理解するようになっていた彼女は
結婚するにあたって愛情の占める割合は低いものと決め付けていたため
両親もやがては愛し合うようになったと言われても、結婚に幻想など抱いてないと答える
3年前華やかな社交界デヴューで自信をつけていたヴィクトリアが、父親が開いた舞踏会の客の中に
ドクター・オリヴァーの姿を見た瞬間、それまで会った多くのハンサムな紳士たちや
一緒に来ていた彼の兄でハンサムなサットン子爵のことも頭から消え去り
何故か彼に視線が釘付けになり、呼吸することも忘れ頭がくらくらするほどの衝撃を受けてしまう
2人きりになる機会に恵まれた時には、ネイサンにただ見つめられるだけで胸がドキドキしてしまい
緊張感から舞い上がったせいで悪い癖がでてしまい、それをどうすることもできないまま
ひたすら意味もないことを喋り続けていた時、キスでおしゃべりを封じられることになる
そのキスはヴィクトリアが思い描いていたファースト・キスとは違っていても
衝撃を受けるほど素晴らしいもので、運命の出会いを感じ再び会えるものと疑いもしなかったが
彼女の思惑とはまったく違い、その日以降彼の姿を見ることも連絡が来ることもなかった
その後彼に会えることを期待して夜会や舞踏会場で姿を探し続けたが、見つけることはできず
6週間後父親にさりげない口調で彼の話題を切り出した時、自分の愚かさを知ることになり
出会いの翌日には彼がコーンウォールへ発ち、この先もロンドンに戻ることはないと教えられ
その時ヴィクトリアは人生で初めての挫折を経験していた
今回父親からコーンウォールへ行って欲しいと言われたことで
乙女心を踏みにじり紳士としてのマナーなど持ち合わせていない彼への復讐として
今度は自分が彼を夢中にさせた末、後ろを振り返ることなく立ち去るという計画を立てていて
そんなヴィクトリアの強い味方は、何度も読み返してきたレディーズ・ガイドだった
叔母の声に現実に引き戻された時、オリヴァー家所有のクレストン荘園に近づいたと知り
屋敷から離れた納屋の近くにいた2人の男性のうちの紳士には見えない上半身裸の男性に目を奪われる
一人はサットン子爵だと思われ、背を向ける筋骨たくましいもう一人は使用人だろうと
何でも思ったことを口にするデリアの、多くの女性を泣かせてきたに違いないという意見に賛成し
過去の経験から女性たちに同情を覚えるヴィクトリアは
レディーズ・ガイドのおかげで踏みにじられたプライドを取り戻すことができたことを感謝していた
動物達のための囲い作りに精を出していたネイサンは、兄に声をかけられ身体をこわばらせる
3年前の事件以来兄弟の間で以前のような仲の良さは取り戻せずギクシャクしたままで
自分が連れてきた動物に文句を言うコリンと話すうち、昔のように冗談を言い合うことになり
昨夜クレストン荘園に着いた時から感じていた緊張が少し緩むが
兄から出て行くべきではなかった、自分の家なのだから戻ってくるべきだったと言われた時には
父親からも出て行くよう言われたことを思い出させ、今回も長く留まるつもりがないことを伝える
3年前自分のミスで幼少期から慣れ親しんだ家を出て、リトル・ロングストーンの村に移り住み
それまでとは生活を一新させ、医者の仕事一筋で村人を診てきたネイサンは
村人から診察代として様々な動物を受け取るうちに数がどんどん増えてしまい
今回必要に迫られてクレストン荘園に戻ることになった時、動物達を置いてくることなどできず
動物園かと兄にからかわれることになるが、自分にとっては当然のことで
医者として正当な報酬をもらってないことや、そんな生活でいいのかと意見されても
自分が満足していることを兄や父親にも理解してもらおうとは思ってなかった
屋敷にある部屋に泊まることなく、敷地内のコテージに自分の居場所を確保したのは
3年前の出来事がきっかけで疎遠となった父や兄とギクシャクしていたせいだけでなく
動物たちを家族同然に思うネイサンには、紳士とは無縁の生活を送っていたせいもあり
堅苦しいしきたりに縛られた元の生活に戻りたいとも思わず
今回戻ってきたのは、ある決意を胸に秘めていたからだった
3年前表向きは医者、もう一つの顔は君主に仕える者として密かに諜報活動に携わっていたネイサンは
上司だったワックスホール卿からの手紙を受け取ったことで、戻らざるを得なくなり
過去に起こったことは消せないが、もう戻ってくる頃だとコリンに言われても
兄と親友を危険にさらした自分を今でも許していなかったため、同意することはできなかった
話題を今回クレストン荘園に滞在予定のレディ・ヴィクトリアと彼女の叔母のことに向けると
ネイサンと同じ時期にレディ・ヴィクトリアに会っていたコリンは、それほどよく覚えていないと言い
忘れたくても忘れられなかった彼女のことを、自分の感情を表に出さず口にするネイサンは
3年前、彼女と束の間言葉を交わしたことや、叔母デリアがワックスホール卿の妹だと教える
弟がレディ・ヴィクトリアに関心があった事を思い出したコリンはネイサンをからかうが
蘇える記憶を断固封じこめるネイサンは、まだ子供だった彼女に何の関心もなかったと答え
以前の職業柄とは言え、いまだ平気で嘘をつける自分に嫌気がさす
ネイサンとレディ・ヴィクトリアの間に会話以上のことがあったと記憶するコリンは
21歳になった彼女はもう子供ではないとからかうが
ワックスホール卿が今回娘の面倒を見るようネイサンを指定してきたことを知っていたため興味を示す
コリンがスパイの才能を生かして自分宛ての手紙を読んだと知り
その手紙が暗号で書かれていて、暗号解読が専門の自分にしか解けないとわかっていても
今回のことに巻き込みたくないと考えるネイサンは、兄に内容を言えないことをうしろめたく感じる
ワックスホール卿からじきじきにレディ・ヴィクトリアの護衛を求められたネイサンだったが
彼女に近づくつもりはないと断言し、金を支払ってでも世話を頼みたいくらいだと言い
弟が迷惑がっていることをおもしろがるコリンはきっぱり断り、彼女が結婚してないと教える
実際の思いとは裏腹に、彼女のように自惚れでおしゃべりな女性の夫になる相手に同情すると言ってしまうが
3年前のことをはっきり覚えているネイサンは、お喋りが止まらなくなった彼女をからかうようにキスしたつもりが
その一度のキスで衝撃を受けたことは予想外だったため
この3年間、彼女との束の間のキスを思い出すたびに、それを打ち消そうと
所詮お天気やファッションのことしか関心がない、社交界によくいる箱入り娘だと言い聞かせていた
今回ワックスホール卿からレディ・ヴィクトリアを保護するよう指示されたものの
どれくらいの期間かも、何故保護する必要があるのか理由には触れられておらず
娘の荷物にネイサン宛ての密書を忍ばせたと書かれていて、その情報を元に謎を解くことができれば
3年前の失態ですべて失ったものを取り返すチャンスだということだけはわかっていた
コーンウォールまで娘をよこしたのは、ふさわしくない求婚者から遠ざけるためではと想像する兄の言葉に
この問題についてレディ・ヴィクトリアがどれほど知っているのか?
父親であるワックスホール卿からどれくらい話を聞いているのかと考えていた
ワックスホール卿がわざわざ指名してきたことから、あくまでもネイサンに任せると言うコリンに
自分は後継ぎではないからレディ・ヴィクトリアの相手にはなれないと答えるが
女性に会いにペンザンスまで出かけるといって去っていくコリンの後姿を見ていたとき
自分がどれほど兄に会えなくて寂しい思いをしていたかあらためて気づかされる
3年前任務に失敗して密会相手に渡す宝石を盗まれたことで、兄や親友を危険にさらしただけでなく
宝石紛失の件で当局からも尋問を受け、身の潔白は証明されたものの噂を消すことはできず
一番辛かったのが父や兄から責められることはなくても、疑惑の目を向けられたことで
ワックスホール卿の目的が何であれ、今回彼が娘の荷物に紛れさせたと言う暗号文を解読し
宝石のありかと本当の裏切り者を見つけ出し、自分の失ってしまったものをすべて挽回する決意で
手紙を見つけ次第レディ・ヴィクトリアをロンドンに送り返すつもりだった
ところがネイサンの思惑通りには行かず、しっかり心構えができていたはずが
レディ・ヴィクトリアが到着し、3年ぶりに彼女と目が合ったとたんその場で固まり
初めて出合った時と同じく腹に一撃をくらったような衝撃を受ける
旅の疲れもみせずいきいきと愛らしく、清潔感に溢れレディにふさわしいエレガントな姿や
長いまつげに縁どられた青い瞳と、あの時のキスを思い出さずにはいられない唇に再び心奪われ
おもしろくないネイサンは、彼女を挑発するように挨拶の言葉をかけるが、より美しく魅力的になった彼女から
女王が下々の者にするよう挨拶を返されてしまい、汚れた格好で挨拶した自分に対する非難だとわかっても
怒るどころかそれをおもしろがり、彼女を家までエスコートすることに
あとに従うヴィクトリアも、内心それ以上ネイサンに見つめられなくてすむと安堵していて
心を見透かされるような視線と、記憶と変わらない素敵な唇を見つめてしまわないようせいいっぱいで
先を行くネイサンの後姿を見ながら、彼が納屋のそばで上半身裸でいた男性だとわかった時には
レディーズ・ガイドのアドバイスに従って、いつもの悪い癖が出そうになるのを必死でこらえる
屋敷に入り2階に案内される間も、3年前のナイーヴな少女ではないと自分に言い聞かせてみるものの
納屋で力仕事をしていたことがわかる汗まみれの汚れた格好にも関わらず、手を伸ばし触れたくなり
そんな自分に狼狽と苛立ちを覚えていた
一瞬目があった時、彼の瞳に以前にはなかった陰を見た気がして同情を覚えてしまうが
何かに傷ついていたとしても自ら招いたことに違いないと、自分の弱さを素早く打ち消していた
そして彼の言葉から自分のことを温室育ちとバカにしているとわかった時にはしっかり言い返し
からかうような口調とは裏腹の熱い視線に気がつき、いつもの悪い癖が出そうになった時には
すぐに冷静さを取り戻せたことに内心小躍りして喜び、計画の滑り出しは順調だと満足する
その日の夕食時正装して席についたネイサンは放蕩息子の気分で、居心地が悪いうえに
目の前ではレディ・ヴィクトリアをちやほやする兄と親友を見ることになり、複雑な心境で
久々に再会したゴードンに挨拶した時、親友がためらったことを思い出し後悔と罪悪感を覚えていた
父親がネイサンの作ったにわか仕立ての動物囲いを褒めたことから、デリアが関心を示し
豚やめん鳥、子猫、牛、アヒル、ガチョウ、ポニーのように大きな犬、何でも食べてしまうヤギなど
途中で茶々を入れるコリンにもめげず自分のかわいい動物たちのことを語り
何故わざわざ動物達を連れてきたのかと父親からも聞かれたときには理由を説明する
その間もゴードンの言葉に笑顔を向けるレディ・ヴィクトリアを見たネイサンは何故か苛立ち
ロンドンにいる彼女の2人の求愛者についてデリアに教えられると
兄までもがヴィクトリアに関心を向けるのを見て、彼らに押し付けれると喜ぶべきなのに
競い合うようにおべっかを使う兄と親友を見ていられず、ワイングラスだけを見つめ
何故それほど自分が動揺してしまうのか心の奥を探りたくなくて
温室育ちのお嬢さんが気になるのは、必要とする情報を持っているからだと言い聞かせていた
夕食が終わり客間へ移ったあと、頭痛を言い訳に一人先に部屋へ引き上げることにしたネイサンは
ワックスホール卿からの手紙を探すためレディ・ヴィクトリアの部屋へ忍び込み
彼女の持ち物に気をとられたりしながら、隠し場所と聞いていた旅行鞄を探していると
そこに隠されていたレディーズ・ガイドを見つけ、ヴィクトリアの意外な一面を知ることになり
スキャンダルになっている本に目を通し大胆な文章に熱くなってしまうが、目当てのものは見つからず
別の鞄に取り掛かろうとした時、部屋に戻ってきたヴィクトリアに見つかってしまう
すぐに冗談でその場を取繕おうとするが、ヴィクトリアはたやすくごまかされず
押し問答の末、彼女が持っていると推測したネイサンは文書を出すよう要求すると
すでに何者かが忍び込み持ち物を調べられていると言うヴィクトリアの言葉に驚き
彼女が旅行鞄に隠されていた手紙を発見し身につけていると知る
密書を渡してもらうためには、何も知らないというヴィクトリアに納得してもらうしかなく
以前のように嘘をつくこともできたが、もう嘘をつく必要もないとすべてを話すことになる
ネイサンが3年前までスパイだったと聞いても初めは信じなかったヴィクトリアだったが
戦争中クレストン荘園が地形的に諜報活動をするうえで都合よかったため、任務に誘われたことや
3年前任務に失敗して宝石の行方がわからなくなったこと、その時任務からきっぱり退いたが
最近宝石のありかがわかる情報が出てきたため自分から取り返す任務に志願したこと
ワックスホール卿からその任務の情報を受け取ることになっていたと説明される
信じがたい話を理解しようと部屋の中を行ったり来たりして考え込んでいたヴィクトリアは
ネイサンのうっとり見とれる視線にも気づかず、やがて父親が関わっていることにたどり着くと
コリンもゴードンも諜報部員だと教えられ、自分の父親にも別の顔があったことを知る
3年前ネイサンがロンドンのワックスホール邸に来たのも、ミッションがらみだったと教えられ
それまで父親の不在をギャンブルや男性特有の軽いお楽しみくらいに考えていたヴィクトリアは
父親に秘密を持たれていたことを知り初めは憤慨するが、やがて傷ついた表情を浮かべる
そんなヴィクトリアを見たネイサンは近づき慰めるように、忠誠の誓いを破れないことや
スパイ活動の重要さを説明し、家族でさえ打ち明けられないとヴィクトリアの父親を弁護する
自分にコーンウォールまで密書を運ばせた理由がわからないと言うヴィクトリアに
彼女の身に危険が及ばないようにロンドンから遠ざけるためと、密書を確実に届けるためだったと答えると
父親の身を心配するヴィクトリアの瞳が曇るのを見て、自分でも何故狼狽するのか理解できないまま
ヴィクトリアの心配を消し去ってやりたいと考えるネイサンだったが
説明を受けて納得したはずの彼女に密書を渡すよう言うと、意外な答えが返って来る
父親の別の顔を知ったヴィクトリアは、傷つきながらも話してもらえなかった事は理解するが
今回何も知らずに密書を持たされたことや、どんな危険な状況に置かれているのか知りたいと考え
自分に選択の余地を与えてくれなかったことが腹立たしく、ネイサンに安全のためだと言われても
レディーズ・ガイドの影響で、男性の庇護を必要とするか弱い女性ではないことを証明するため
自分も一緒に今回の任務を手伝いたいと言い出す
そんなことは問題外と、威嚇やきわどい会話でヴィクトリアから密書を取り戻そうとするが
彼女の意志が固いことを知ったネイサンは一旦引き下がるしかなかった
ワックスホール卿からの密書を受け取ればヴィクトリアと関わることもないと考えていたが
翌朝乗馬に出ようとしていたヴィクトリアと一緒に過ごし、話をするうち
思っていたような軽薄で甘やかされた社交界の花ではないと知ることになる
警護する必要があるからと乗馬に同行することになり、慣れ親しんだ敷地内の森を散策するうち
過去の様々な思い出が蘇えり、自分がどれほど家を離れて寂しく思っていたか気づかされたり
お気に入りの場所に案内した時、感動に浸るヴィクトリアから視線を外せなくなったり
その間に子供の頃仲の良かったコリンと様々ないたずらをして馬丁を困らせた話を聞かせたり
3年前の任務に失敗したことで父や兄、親友との仲が修復できないせいで家に戻れなかったと話していた
父親の秘密や3年前の出来事の真相を知らされ、眠れない夜を過ごしたヴィクトリアも
一人で考えをまとめたいと乗馬に出るつもりが、ネイサンに案内されることになり複雑な思いだった
3年前の彼の立場は理解できても、軽いお遊びくらいに思われていたとわかると腹立たしく
二度と彼に笑われてなるものかと、昨夜は密書の暗号を解こうと試してみたがうまくいかず
父親からも聞きたいことは山ほどありロンドンに戻り次第追及するつもりで
ドクター・オリヴァーへの復讐に関しては考え直すことになるが、どうしても譲れなかったのは
一度のキスで自分を夢中にさせた彼に、同じ経験をさせたいと言う思いで
そのため今回の任務を手伝うことで一緒に過ごせば、その機会を得られると考えていた
だがネイサンに案内され散策を続ける間、彼の動物達に対する思いや、幼い頃の話を聞いたり
3年前の事件で心に深い傷を負っていることなど知り、同情心が芽生えたり
お気に入りの場所に連れて行かれた時、何気ないふれあいにドキドキしてしまい
相手を夢中にさせるつもりが、逆に惹かれていることに気づき計画通りにいかず悔しい思いをする
さらに誰にも教えていないと言う、特別な場所に連れて行かれ2人きりになった時には
お喋りが止まらなくなる悪い癖が出てしまうが、レディーズ・ガイドの教えの賜物で自分を取り戻し
3年前の任務で、家族や住み慣れた家から離れざるをえなくなった彼の立場を疑問に思い尋ねると
任務に失敗したネイサンが宝石を盗んだのではないかと疑われていると知り
自分の父が今回の任務につかせたのだから、信用されていると考えるヴィクトリアだったが
ネイサンはそれも自分をはめるための罠かもしれないと答える
海辺の断崖の内側にある自然が造りだした神秘的な空間で、前回の出会いの時のキスを確認したいと言われ
彼にキスを許したヴィクトリアは、未経験ながら本能のままに応えて夢中になってしまうが
体に触れられると、彼が密書を自分から取り戻すためにしたのだと思い込み憤慨する
それを聞いてネイサンは笑い出してしまうが、実はヴィクトリアに触れたとたん自制心が吹き飛び
思春期の頃に戻ったような自分の反応に驚いていて、そんなつもりはなかったと否定しても
信じない彼女からスパイならやりかねないと言われ、自分が思いつかなかったことを内心悔しがる
密書を渡すことを条件付で認めるヴィクトリアに理由を尋ねたネイサンはその答に驚かされる
それは甘やかされ何不自由なく暮らしてきたはずの彼女が、実際は満足していたわけではなく
女性と言うだけで賞賛されても人格は無視され、お飾りの人形のようにしか見られないことに不満で
あることがきっかけで、そんな不公平な人生をおくりたくないと思っていたときに
父に長年嘘をつかれ蚊帳の外に置かれてきたと知り、女性でも冒険ができることを証明したいと言い
それまでの人生で、一番ワクワクしたのは3年前のキスだったと打ち明けられたネイサンは
その告白と、今にも泣き出しそうなヴィクトリアの表情に胸に一撃くらった思いで
けんか腰の彼女ならやりあうことはできても、そんな無防備な姿を見ることには耐えられず
女性と言うだけで頭が空っぽな間抜けのように扱われたくないと訴えるヴィクトリアに
密書を受け取る代わりに、一緒に紛失した宝石を見つけるという条件をのむと答える
自分の思い通りになったことにワクワクするヴィクトリアだったが
取り引き成立のしるしはキスをすることだと言われて、疑いながらも応じると夢中になってしまい
あっさり身を引いたネイサンに密書を出すよう言われた時にはがっかりしてしまう
ネイサンへの復讐計画のほうは思い通りとはいかず、自分はキスひとつで動揺しているのに
何の悩みもなさそうなネイサンが癪にさわり、沈黙のまま屋敷に戻ることになる
屋敷に戻った時、コリンとゴードンが納屋の外で待ち構えていることに気づいたネイサンは
美味しそうなお菓子を見るようにヴィクトリアを見つめるゴードンや兄に、歯をくいしばるしかなく
2人がヴィクトリアを誉めそやしながら屋敷に向う姿を見送ることになり、苦々しい思いだったが
馬を戻しに馬屋に戻り、ネイサンが生まれる前から仕えている馬丁のホプキンスから
ヴィクトリアはネイサンしか眼中にないと言われ、昔から観察力のある彼の意外な言葉に驚かされる
その時外で騒ぎが起こり何事かと駆けつけると、しゃがみこんだヴィクトリアの姿を見つけ
何があったか尋ねると、ネイサンに渡そうと持っていた密書をヤギが食べてしまったと教えられる
2人がお互いを責め合っていると、訳のわからないゴードンが何事かと尋ね
コリンは事情を知っていて自分だけが知らなかったとわかったゴードンは怒りをぶつける
ネイサンとオルウィック卿の会話が険悪になるのを見ていたヴィクトリアは
ネイサンに中身を見たか聞かれほとんど覚えていると答えたため、内容を復元することになる
暗号を何度も解読しようと目を通していたため、ヴィクトリアはほとんどの内容をほぼ複製してみせ
一緒に添えられていた父親のお絵かき程度の簡単な地図も同様に完成させると
暗号を解読したネイサンは、内容をヴィクトリアに教える
宝石のありかを見つけ出すための地図らしきものと、娘の身の安全をネイサンに託す言葉と
その情報で宝石を見つけて、3年前の潔白を証明するようにという内容だった
地図が本物ではないためクレストン荘園の敷地内だとわかっても、宝石のありかを示す謎が解けず
ネイサンは父親の身を心配するヴィクトリアに、彼は優秀なスパイだから心配ないと安心させる
父親がネイサンを信頼しているなら、自分もそうすると心を決めたヴィクトリアは
手紙に出てきた宝石のありかを残した人物について尋ね、地図についても話し合う
ネイサンは秘密は知る者が少ないほどいいと、コリンやゴードンにも秘密にすることを約束させ
宝石の隠し場所を見つけるため2人で地所をくまなく捜索すことになる
ヴィクトリアはネイサンが自分を差し置いて単独で行動するのではないかと疑いながら
本当に宝石探しに連れて行ってもらえるとわかると、冒険心を刺激されワクワクする思いで
3年前の事件があった現場に出向き、ネイサンから詳しく話を聞いた時には同情心がこみ上げる
実際任務にあたっていたネイサンだけが無傷で、その場に居合わせた兄と親友が怪我を負ったこと
何も知らなかった父親には裏切られたと思われてしまったこと
宝石紛失に関しては潔白だと証明されたのに、ネイサンが盗んだという噂が広まり
父と兄から非難こそ受けなかったものの、信じているという言葉もなかったため傷ついたこと
その時自分の潔白を訴えるでもなく、人々の噂が届かない村に落ち付き満足していると言われても
ヴィクトリアには、ネイサンの瞳に3年前にはなかった憂いを見て本当はそうではないとわかる
そして3年前には名前しか知らなかったネイサンのことを一緒に過ごすことで多く知ることになり
復讐計画どころか、さらにネイサンに惹かれていく
ヴィクトリアがロンドンに戻れば求婚者が2人も待っている立場だとわかっているネイサンも
動物達に近づいて仲良くなる様子を見たり、自分の心のすき間に苦もなく入り込んでくる彼女が
甘やかされた貴族令嬢ではないとわかり、3年前交わしたキスのことを誤解しているとわかった時には
言うべきではないと思いつつ、あの時自分も好意を感じていて素晴らしいキスを覚えていると伝える
ヴィクトリアを求める気持ちは募るが、所詮称号もない自分では彼女にはふさわしくないと考え
ロンドンに戻って他の誰かの妻になると考えただけで、胸が苦しくなるほど嫉妬にかられるが
質問攻めですべての状況を知ったヴィクトリアから信じていると言われた時には
その単純な言葉ひとつに胸が熱くなり、強がるのをやめて素直に礼を言う
宝石探しをする合間も、様々なことを話し合った2人は相手のことをよく知るようになり
お互い孤独を感じていたとわかり、それぞれの思惑とは逆に距離は縮まるが
それぞれ相手を求める気持ちはあっても、どうすることもできないでいた
そんな2人の仲が進展したのは、ネイサンがイライラを解消しようと近くの池に泳ぎに行き
彼がこっそり自分を出し抜いて一人で宝石を探しに行ったと思い込んだヴィクトリアがあとをつけ
そこで初めて求め合う気持ちをはっきりさせることになるが
レディーズ・ガイドで得た知識を実践で知ることになったヴィクトリアは、それ以上を求めても
ネイサンは自分のものにはできないとわかっていたため先に進むことはなかった
だがその帰り道、何者かに襲われヴィクトリアにナイフを突きつける賊から密書の写しを要求され
ネイサンが要求どおりにしたため地図も奪われることになりヴィクトリアは悔しがるが
ヴィクトリアの安全が第一と考えるネイサンは、ナイフで傷ついた彼女の手当てをしたあと
渡したのは偽の地図だと教え、さすがスパイだとヴィクトリアを感心させる
ヴィクトリアの身を危険にさらしたことで、3年前の悪夢が蘇えるネイサンは
ワックスホール卿との約束を守れなかったと自分を責め、2度と間違いはおかさないと心に誓い
ヴィクトリアにも一人で行動しないことを約束させる
その出来事を聞いて心配するデリアに、それまでのことを打ち明けたヴィクトリアは
叔母もレディーズ・ガイドを読んでいると知り、自分の心に正直に従うよう言われ
悩んだ末、今だけを楽しもうとネイサンを恋人にすることを思いつく
その夜スパイの才能を活かしてヴィクトリアの部屋に忍び込んできたネイサンに
勇気を出して切り出したヴィクトリアは、結果を心配する彼に自分の意思をしっかり伝え
2人だけの秘密としてロンドンに戻るまで情事を続けることになる
その日から昼間は地図を頼りに宝石探しに何時間もついやし
コリンは商用でペンザンスに出かけ戻らないまま、ゴードンも訪ねて来なくなったため
ネイサンの父とすっかり意気投合した叔母デリアの熟年カップルと夕食をともにしたあとは
真夜中過ぎにネイサンが忍び込んでくると、朝が来るまで素晴らしい時間を過ごすことになる
ネイサンにビリヤードを教われば、ヴィクトリアはお返しにピアノを教え
時には意見の対立もあったが何時間も文学について議論し合ったり
恋人としてだけでなく友人としても素晴らしい相手だと満足し、あっという間に1週間が過ぎた時
ネイサンとの別れの時が来ることを考えるようになっていたヴィクトリアは
感傷的になってしまう自分を叱り、その日が来るまで楽しもうと頭を切り替える
一方デリアと巡り会ってすっかり変わったと言う父親とじっくり話すことになったネイサンは
デリアに好意を持っていることを打ち明けられ、3年前のことを謝罪される
弁解さえしなかった息子を信じなかったと自分を責める父親と和解でき、心のしこりがほぐれるが
ヴィクトリアとの仲に気づいていたと言う父親から、自分の想いを打ち明けるべきと言われる
その日いつものように宝石探しに出たネイサンは、捜索してない範囲も残り少ないことを知り
愛を告白すべきか迷っていたが、ヴィクトリアの気持ちがわからず自信がなかったため
もう少し時間をかけようと先延ばしにして、用意してきた手作りのプレゼントを渡した時
高価な品物をもらいなれているはずの彼女から、大切な宝物にすると言われ安堵する
その夜、ネイサンが思いがけない人物の不審な行動を目にしたことで
地図をもう一度見直した結果、ついに宝石の隠し場所がわかり
宝石を狙ってネイサンのあとをつけていた犯人も捕らえることになる
数時間後その騒ぎの最中怪我を負った父親を心配そうに見守るヴィクトリアは
ネイサンの診断でもう心配ないと言われ安堵する
ロンドンから駆けつけたワックスホール卿は、宝石のありかや裏切り者の正体を知ることになり
ネイサンに知らせようとしていたところへ犯人の銃弾を受けてしまい
その後の事件の経緯を説明されると3年越しの事件が解決したことを喜び、すぐにロンドンへ戻ると言う
ヴィクトリアにロンドンで待つ求愛者のことを思い出させたワックスホール卿は
ネイサンと娘の関係を知る由もなく、事件が解決した以上とどまる理由はないと考えていて
ロンドンに戻り次第、ヴィクトリアが求婚者のどちらかを選んで式を挙げるものと期待していた
恐れていたネイサンとの別れの時が来たと知り、一人自室で思い悩むヴィクトリアは
それまで否定してきた自分の気持ちに向き合い、ネイサンを愛していると認める
その日の夕食時、叔母デリアは一ヵ月後にネイサンの父と結婚するためこのままとどまると宣言し
社交好きな叔母が田舎生活に満足できるのかと驚くヴィクトリアは、愛が勝利したと言うデリアから
ネイサンとの仲を心配され、正しいと思えることをしなさいとアドバイスされる
その夜、部屋にやって来たネイサンに何か言ってもらえるかと望みをかけていたヴィクトリアは
彼の言葉と別れの贈り物だと渡された品を見て希望が消え、自分の想いを打ち明けないまま
2度と会えないと覚悟してネイサンとの最後の時を過ごす
翌朝父親とロンドンに向う馬車の中、絶望に浸り窓の外ばかり見つめていたヴィクトリアは
娘の様子に気づきおろおろする父親から、ネイサンに頼まれたという手紙を渡されると
それを読んで半泣きの笑顔を浮かべたまま、すぐに引き返して欲しいと頼む
ヴィクトリアを行かせたのは正しいことだと自分に言い聞かせていたネイサンだったが
心引き裂かれる思いを酒で紛らわしていた時、戻ってきたヴィクトリアの姿を見て
ロンドンに着いてから渡して欲しいとワックスホール卿に託していた手紙をすでに読んだと知り
考える時間を与えたかったと言うと、もう心は決まっていると言うヴィクトリアから愛を告白され
その場に跪き結婚を申し込む。
エピローグまで入れると360ページの作品でしたが、やはり時間をおいてしまったせいと
3年前の宝石紛失事件で始まる謎解きの部分や、事件解決に至るまでをぼかすのに苦労して
結局、ラストの感動シーン、エピローグも省くことになり、なんだかおかしなことになってます
前作ではロンドン社交界で話題になっているスキャンダラスな読み物
レディーズ・ガイドの謎の作者も登場してましたが(結局謎は謎のままで終わってます)
本作では、その話題の本に感化された純真な乙女が、「強い女性になるんだ!」的な
お話の始まりから、初めのうちはヒーローよりヒロインのほうが想いが強い感じだったので
もしかしてはずれか?と思いながら読み進めるうち
そこはやはりジャッキー・ダレサンドロ! スーパー・メロメロ・ヒーローでした!
ヒーローのほうが先にヒロインを好きになるとか、想いの度合いが強いとか
ワンパターンと言われようが、お決まりの展開が好きなもので
そういう点では、読み初めからややためらわれたのですが
読み進めるうちにヒロインが純真無垢で、とっても好感が持てることや
「こんなはずじゃなかったのに・・」的に、おたおたするヒーローの言動がおもしろく
本来なら動物が苦手な私には向いてない作品かと思いきや、なかなか楽しめました
表向きは医者、裏ではスパイ活動をしていたネイサンの事情と言うのが
あの頃の時代設定だから、次男として生まれたため医者として自立するだけではなく
国のために仕えて、報酬も得られるという一石二鳥のスパイ活動をしていたというのが新鮮で
よくある正義感に燃えてとか、愛国心ゆえにとかのきれい事だけでなく
3年前の任務を引き受けたのも報酬のためと現実的なヒーロー
(エピローグでのめでたし、めでたしエピもそのことに触れられてます)
それゆえ国王の宝石を紛失した時には(そのくだりは省きましたがしっかり説明されてます)
ネイサンが疑われるのですが、彼自身はワックスホール卿ではないのかと疑ったりもしてる(多分)
さらにネイサンの心の傷は、家族である父親や兄コリンにまで宝石を盗ったのではないかと疑われたこと
一方のヴィクトリアは3年前社交界デビューをはたしたばかりの何も知らない乙女から
レディーズ・ガイドという強い味方を得て、ネイサンの行動に深く傷ついた自分を克服して
求婚者の一人と結婚するつもりでいたところ、過去の事情や父親の秘密を知り
自分を主張し今までできないとあきらめてきた冒険に胸躍らせるという展開で
ネイサンを自分の魅力でまいらせて、成功したら後を振り返らず去っていくと決めていたはずが
ネイサンがスパイだったと知ると、俄然興味を示し、質問攻めにしたり
緊張するとお喋りが止まらなくなるなど、言動がやたら可愛らしく
意外なことに(?)文句のつけようのないヒロインでした
ネイサンの父親とヴィクトリアの叔母デリアとの熟年カップルのエピソードはほんのちょこっとですが
2人とも良い人キャラで、こういう展開もありかと納得
次回作でヒーローとなるネイサンの兄コリンは、本作では結構怪しい行動をとるので
彼がヒーローになると知らなければ、犯人探しで楽しめたかとも思えます(ネタバレばれですね)
本作では後継ぎとして生まれなかったネイサンの次男としての立場や苦悩がわかり
4作目のコリンのお話では生まれた時から後継ぎとして責任と義務を背負う苦悩がわかるという
バリエーションも様々で、なるほどな~と納得
ただ3冊続けて読んでしまったせいで、感想がごちゃ混ぜになってないか不安です
いつものごとく、名前は適当です
Nathan Oliver ネイサン・オリヴァー
Lady Victoria Wexhall レディ・ヴィクトリア・ワックスホール(?)
Colin Oliver,Viscount Sutton サットン子爵、コリン・オリヴァー、ネイサンの兄
Earl Rutledge ラトリッジ(?)伯爵、ネイサンの父
Lady Delia デリア、ヴィクトリアの叔母、ワックスホール卿の妹
Gordon Remming,Earl of Alwyck オルウィック(?)伯爵、ゴードン・レミング、ネイサンの親友
Lord Wexhall ヴィクトリアの父(伯爵?)
the Crown 国に仕えるみたいなニュアンスにしてしまったけど
エピローグには国王が会話に出てくるから
君主とか王とか訳すのかな?(訳本がでたら要チェック)