こんにちは、医療職のダイです。



僕が大学を卒業してから医療職に就くまでの経歴は以下の通りです。
① コンピュータ会社に就職
② 体外診断薬メーカーへ転職
③ 新規事業に伴う別会社への転職〜退職
④ 紆余曲折の黒歴史
⑤ 病院へ転職 

現在は、⑤の病院へ入職後のお話しです。



病院で職員数が多い部署といえば病棟です。

病院の事務職員をやっていた当時、仕事のひとつに病棟の勤務表のチェックがありました。

表計算ソフトで、各病棟の師長からあがってくる手書き(当時)の正看護師、准看護師、看護助手の勤務の予定と実績を入力するのです。



ただ、入力するだけなら楽なのですが



病棟の種類に応じた人員の配置基準というのがあり、それをクリアしないといけなかったのです。

そこに目を光らせて、勤務表の職員の数と勤務日数及び時間をチェックする必要がありました。



病棟には、一般病棟、回復期病棟、地域包括、そして、介護医療の病棟…など特性に応じた種類が複数あります。

そして、病棟の種類に応じた人員の配置基準という決まりがあるのです。



基準とは、第一に、患者様に安心安全の医療を提供するために必要なものです。

病院は診療行為を行なって診療報酬を得ますが、基準を満たしていないと、患者様からお金をいただくことも保険請求をすることもできません。

基準は病院が診療報酬(収入)を得るために必要な条件とも言えます。



例えば、施設基準。

病室やデイルーム、リハビリ室の広さなど、施設に関する基準がそれにあたります。

そして勤務表で確認する人員の配置基準。

病棟における配置基準とは、入院している患者様の数に対して必要となる医師・看護師・介護職員の数です。 

例えば一般病棟では患者16人に対して医師が1人、患者3人に対して看護師が1人必要とされています。

ですので、複数の病棟を抱える病院は、そこでの基準を満たすために、人員の数の管理が必要になってくるのです。



配置基準をクリアしないと、入院基本料が算定できなくなってしまいます。

つまり、病棟ごとに法で決められた職種と人数を配置しないと、患者様から入院費をいただけなくなってしまうということになるのです。



病棟には決められた数の人材(=人財)が必要なのです。

医療の質を高めるための人的資源の「人材」
配置基準を満たすための人的資本の「人財」

といったところでしょうか。



このように「基準を満たす」ということは病院が医業によって収益を得るための「必須条件」でもあるのです。


医療も介護も慢性的な人手不足が続く中、病棟における職種ごとの職員の数のやりくりはとても大変です。



例えば、病棟職員で退職予定者が出ると、勤務表と睨めっこして、基準をクリアできるか検討。

厳しいようであれば、新規採用若しくは他の病棟や部署からの異動を上司に進言していました。



勤務表を複雑にしているのが、病棟職員の勤務体系です。

当時の当院は3交代勤務で、勤務形態には日勤A・B、半日、遅出、深夜勤、準夜勤、パート勤務、学生勤務がありました。



病棟職員の中には様々な都合で、夜勤ができる人と出来ない人がいます。

また、子供の入学式や卒業式や冠婚葬祭に親の介護を利用とした休みの希望の調整。

さまざまな事情を抱えた職員による複雑な勤務体系と基準を切らさない管理。



それは、とても大変なことなのです。



そうしたなか、僕がやっていた仕事は、机上で人員数や勤務時間の計算をやって、必要であれば対策を講じるためのデータを作り報告すること。



一方、病棟師長は、職員のそれぞれの事情を聴きながら、状況によっては、やむを得ず無理をお願いしたり、無理をお願いするにしても全体のバランスを見ながら、不公平にならないように配慮していました。

人相手のやりくりの煩雑さとストレスを思うと、頭が下がる思いでした。



また、現場で生命を預かる緊張感の中、激務に追われ交代勤務をこなす病棟職員の疲労とストレスを考えると

「こうした人たちの頑張りに支えられて社会が回っているのだな」

とも思いました。



当時、その仕事に関わってなかったら、きっと得られなかった気付きです。



その頃の習癖が抜けないのか、言語聴覚士となったいまでもナースステーションの職員勤務状況の掲示を目にするたびに、人員のことが気になってしまうのです。