もう私の中で、諦めがついていた。
夫とはもうだめだって…
なんで夫はこんなになっちゃったのだろう。
まともな人生歩いて来た人ではないけど、
私の中では、ずっとかっこいい人だった…
今では、落ちぶれたおやじにしか見えない。
浮気だってしょっ中だった。
むしろいなかった時なんてないのでは?というくらい…
だけどそれも、今思えば彼の甲斐性だった。
でも今回は違う、中身が違う。
こんな形で私にも身近な女に手をつけるなんて、こんな女に手をつけるような人ではないと思っていた。
別に自分がいい女だと言っているわけではない。
でも、いくらなんでもあれはない…
容姿も中身もただの田舎のヤンキーみたいな女。
別にブスではない。
だけど、なんだろう…
一緒にいると恥ずかしい人。
性格も良くない。
仲良くしてる友達なのに、いつもバカにしていた。
自分の事は可愛いと思っている。
だから友達のことをいつも見下していた。
それに夫は、この女にハマってさえいる。
何がいいのかさっぱりわからない…
バカにされているとすら思う。
いくらなんでも夫が浮気して来た女たちはもっとまともだったはず。
たしかに、ここには他に女なんかいない。
だからって…
私は、一緒にいる人間は自分を映していると思っている。
だから、友達にしろ仕事相手にしろ付き合う人間は大事だ。
自分にかなりの影響力をもたらす。
ならばパートナーはもっとだ。
夫は引っ越して来てから、付き合う人間が変わった。
というより、その人たちしか居なかった。
その女夫婦と、女の友達夫婦だけ。
後は仕事関係の人がいるけど、仕事上の付き合いだけだから。
私は、第一印象からこの女夫婦や女の友達夫婦はなんだか嫌だった。
でも夫は、何かとその人達を誘った。
たまに仕事で帰っていたけど、それまでの生活を考えたら、夫の環境ははるかに変わった。
今までいつでも周りに人がいた夫の寂しさはわかる。
だけど、例えばその女や女の友達たちと一緒にいる夫を、夫がそれまで付き合っていた人たちが見たら、きっとすごく驚くだろう。
驚くどころか、今の夫を見たらみんな離れていってしまうかもしれない…
それほど、夫は変わってしまっていた。
お金がない、周りに人がいないというのは
ここまで人を変えてしまうのか…
それとも、女が夫をここまで変えてしまったのか…
私がいけなかったのか…
お巡りさんが帰った後、夫と話をした。
昨日の出来事、私がどこにいたのか。
私はとにかく飲みに行っていたとしらを切り通した。
夫は、誰と飲んでいたのかと聞いて来たから不自然ではない友達を挙げた。
比較的近くに男友達が住んでいたのは夫も知っていたから。
その友達なら、ここから電車でちょっと飲みに行くのは不自然ではないから。
だけど夫は、男友達ということが少しか大分か引っかかっているようで、少ししつこく聞いてきたが、もう別れるんだから関係ないと私は突っぱねた。
そんなことより、女との事を問い詰めたが、なんとなく認めつつも女との関係は否定した。
夫は私を見て、
お前痩せたな…といい髪を撫でた。
髪を撫でた夫が、
お前白髪増えたな…と言った。
私も気がつかなかった。
まだ白髪が目立つ歳ではないけど、無くはなかった。
夫はそんな私を見て、
ごめんな…と言う。
もう帰る、と言うと
夫は私に抱きかかってきた。
別れるんだからやめて!
と言っても、夫は私を離さない。
拒み続けたが、夫は
最後だから…と言った。
私もその言葉に、力が抜ける…
最後に抱かれよう…と。
なんか涙が出てきた…
泣かないって決めてたのに、
涙が止まらない。
夫は、私を抱きしめながら
出会った頃から今までのことを話し始めた。
出会った時、お前まだ19歳だったよな…
俺が捕まった時、お前何回も面会きたな…
夫も泣いていた。
夫が泣くのを見たのは、2回目だった。
1回目は、遥か昔
夫が捕まった朝
警察が玄関前まで来ていて、
しばらく一緒に居られなくなるからと私が泣いてしばらく抱き合っていた時。
あの時と同じ、
夫は
お前が泣くから俺まで涙が出てくるよ…
と言いながら私を抱きしめた。
ごめんな…
と言いながら。
泣くならなんでそんなことしたの…
謝るなら、私のところに戻って来てくれればいいじゃない…
私は、もう本当に終わりなんだ…とそう思った。