大切な人は誰ですか?
そう問われた時に即答。
「もちろん、私」
次の日。
私と藍莞は銀町のおばあさんの家(藍莞の方の)に泊まりに行くといって町を離れた。
もちろん、両方の親には内緒で計画だ。
唯一の理解者。というか勝手に考えた立案者はお姉ちゃんだ。
だからお姉ちゃん以外はみんな知らない。
最後に、家を出たときにお姉ちゃんから「あんた、藍莞君の気持ち気づきなよ?」と言われたがスルーした。
知ってた、から。
なんで、こんな私に付きまとって。
最後まで一緒にいてくれるか知ってたから。
だから余計に。
そういう姿見ると可愛くて仕方がない反面、しばらくはこのままがいいって思う。
「二人で出かけるの久しぶりだね」
「そうだね。大抵は真美さんが一緒だったからね」
子供っぽく藍莞は笑うと私と一緒にバスに乗り込んだ。
真美は、口うるさい私のお姉ちゃん。
なにかと藍莞を可愛がり本当の弟のように接している。
車を持っているせいかよく三人で出かけているのも今回の出来事(銀町へ行く)は例外だろうな。
「危ないことしちゃダメだよ」
「真夜の方が危なっかしいけれどね」
「そうかな?」
「そうだよ」
最後尾に座ると私はジュースを口に運ぶ。
甘酸っぱいリンゴの甘みが口の中の広がり、くすぶったい。
「今回は遊びに行くんじゃないよ?」
藍莞は言うと「はいはい」
私は無邪気に答えた。
その時は、まだ知らなかった。
その時はまだ知らなかった。
知らないまま。
引き返していたら。
元の現実に戻されることを。
まだ知らなかった。
――銀町――
銀町に到着して私は、少なくとも私は絶句した。
町自体はそこまで発展はしていないが、デパートはある。
商店街もある、住宅街もある。
でも、不思議と違和感を覚えた。
「ねぇ、真夜」
少し怪訝そうに藍莞は言うと彼らしくもない不安な顔つきで私を覗き込んだ。
「―――『怖い』」
ただ一言。
そう言うしかなかった。
町を包む雰囲気というかなんと言うか。
今まで見てきた町とはあからさまに違う。
何かに憑かれているような、ほら、例えば霊能力者がいたら「この町には幽霊がいます」とか言ってそうな、そんな感じ。
ぞくっと悪寒がする。
通り過ぎる人がみんな敵のような感覚。
冷たい視線とか、どこからもなく突き刺さる。
ねぇ、藍莞。
さっき怖いって言ったよね?
私も怖いよ、でも。
あんたがいるから、あんたがいるから。
あんただけでも守らないとって気がする。
「ねぇ、早く、藍莞のおばあさんの家行こう」
その場から逃げるように、私は言うと藍莞も同意したように苦笑いした。
しばらく歩き続けて数十分。
その場所…藍莞のおばあさんの家はなかった。
どうして?
隣から聞こえる微かな嗚咽。
最初からなかったように。
最初からいなかったように。
藍莞のおばあさんの家はなく、空き地だった。
「ねぇ、藍莞?」
私の声が強張るのがわかる。
強がってないと、泣いてしまいそうな私の声と。
夕暮れ時の寂しい風の音が自然と重なる。
「―――『本当に』ここにあったの?」
「――――――」
少しの沈黙。
しばらくの沈黙?
たった少しの時間なんだろうけれど、私には長く感じた。
永遠に続くかとも思った。
「2年前まであったよ」
前まで?
「ねぇ、それって…」
「いきなり来て、驚かせようとしたん…だよ。だって2年間も連絡なかったもん」
急に怯えた声で言うと彼は私にすがるように体をすり寄せてきた。
「ねぇ、説明して!? 藍莞? これは『なに』?」
私は空き地を指差して嘆くように、誰かに助けてもらいたかったように。
彼に踵を向ける。
「わからない、よ」
わからない?
わからない?
「おばあさんはいつも連絡なかったから。でも家はもっているって聞いて」
「誰から聞いたの?」
「お父さん」
藍莞のお父さんは海外出張が多く、忙しいビジネスマンだ。
もしかしたら。
「おばあさん、亡くなったってことはないの?」
微かな、確証。
確かな、証言でもない限り諦めきれない私の心。
私よりも幼い藍莞に身内の不幸を認めてもらうことは辛いかもしれない。
でも、でもね?
現実受け止めなきゃ。いけないの。
「―――わからない」
藍莞はそれだけ言うとその場に崩れこんだ。
泣き声は聞こえない。
ただ、その場に崩れこんだ。
「ちょ、え?」
二度の不幸とはこのことだろう。
公衆電話の回線は町内のみ対応、田舎物の私にはケータイと言う高等機械を買える金すらなく、もともと機械音痴なんで使えるわけがなく。
バスは2日に1本(人を子馬鹿にしてるのかしらね?)
藍莞のノートパソコンも県外。
田舎…じゃ、ないはずよね?
私は藍莞を連れて交番に駆け寄った。



です。


