先代から数えて十一代目の飯島吉六さんが刻んだ狛犬が川崎の大島八幡さんで睨みを効かせています。ここでは阿ママの方が「玉取り」をしています。通常、玉取は男の専売特許のように扱われるのですが、ここのワンコの場合は吽君に時節柄(日露戦争か)の「砲弾」を持たせちゃったので、仕方なく奥さんには玉を持たせる以外に方法が見つからなかったのかもしれません。
 こんなシチュエーションですからママに子どもと遊ばせるわけにはいきませんものね。そんなことをすると国威発揚の張り切りが腰砕けになっちゃいますし。
 そんなことで狛犬というのはその時・その時代の空気や世相を敏感に表出させる道具にも使われることがよく分かります。なので、子取りのワンコが方々に奉納されている時代というのは平安・安寧の時期を表している証明でもあるのです。


 台座には「凱旋記念」の文字や交差させた旭日旗、そして交差させた銃と碇など日露戦争勝利のワイワイした空気がそのまま彫られていますね。狛犬がこのような姿になるのは悲しい物がありますが、これも当時の「空気」を的確に伝える歴史の証人という見方も出来るわけですね。




 この作者の「第十一代・吉六」さんで飯島吉六の石工歴は終わったようです。この後の年代の吉六作品には未だに出会っておりません。
 一応、今回で「飯島吉六」さんの特集は一旦終わります。また新たな発見が出来ましたらその都度ご報告をして行きたいと思います。長い間、ご覧くださり有難うございました。次回は、また違うテーマのワンコたちと出会いを楽しんで行きたいと思います。



生息地:神奈川県川崎市川崎区大島3-4-8

 

大島八幡神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 
(なんたって砲弾付きですから凄みだけでも充分備わってます)
●狛犬としての個性度   
●癒され指数       (台座に「旭日旗」と「碇に鉄砲」がレリーフされていますから、とても癒しなんていう雰囲気は存在しておりません)
●思わず笑っちゃう度   
●奉納日 明治三十九年十月(1906年)
●作者名 第十一代・
飯嶋吉六
●撮影機材 Canon EOS55(28-70mm)