和解成立後⑦ 病院からの電話 からの続き

 

新しいパートナーとの子を妊娠中だった元妻ユリが倒れて、心肺停止で病院に運ばれた、と聞き、僕は病院に駆けつけました。

 

病院内の家族の待合室まで行くと、そこにはユウヤとユリの両親、そして息子のカイトまでがいました。

 

カイトは何かが起こったことは理解していましたが、それが一体何なのかまではわかっておらず、僕を見ると笑顔で駆け寄ってきて、普通に本を読んだりテレビを見たりしていたので、僕は少しホッとしました。

 

 
少しカイトと話してカイトが落ち着いているのを確認した後、ユウヤに一体何が問題だったのかと尋ねると、血栓症だった、と言われました。
 
血栓症は妊娠中の女性、特に高齢出産の女性がかかりやすい病気の1つです。
心臓に血液を戻す静脈の中で血液が固まり、血栓ができてしまう病気で、その血栓が体内の静脈のまずい位置に詰まると、足がパンパンにむくんで歩けなくなったり、心肺停止を起こしたりして、命にかかわることもあるという恐ろしい病気です。
 
僕は知らなかったのですが、ユリはこのためにしばらく入院して治療をしていました。
しかし、どうしても家に帰りたいと言い張ったため、自分できちんと注射を打てるなら、という条件で、注射の打ち方を習い、最近病院から家に帰ったんだそうです。
 
なぜリスクの高い超高齢出産で、8カ月にもなっているというのに、無理に家に帰ったのか。
本人も、それに同意した家族も、家に帰ることを許可した病院も、なぜそんなことをしたのか。

 

僕が夫だったら、絶対そのまま入院させていた。

 

なぜあと少しだけ慎重に振る舞って、我慢して待つことをしなかったのか。
あれだけの大問題を引き起こして妊娠した子を、あと少しのところで失うなんて・・・。

 

 
それを業といっていいのかどうか、僕にはわかりません。


とにかく、カイトの父親として、また少なくともユリの友人として、手伝えることがあれば何でも言ってください、と僕はユリの家族に告げました。
何ならユリが入院している間は、僕がカイトの面倒を見ますよ、という申し入れすらしました。
 
僕の家はユリの家の近所でしたから、そのままカイトが通っていた幼稚園にカイトが通い続けることも可能だったのです。

 

それなのに、僕がそう言った瞬間、ユウヤをはじめとしてユリの両親も顔色を変え、「いやいや、大丈夫です」を繰り返しました。

 

ユリの両親の家はユリの住んでいた家から電車で30分以上かかったし、父親である僕がカイトの面倒を見るのが当然と思ったのですが、あまりにユリの両親がそう言い張るので、病院で揉めても仕方ないと思った僕は、その日はおとなしく帰宅しました。
 
後から知ったことですが、病院に運ばれたユリは、息を吹き返した後、意識を失ったままの状態で何度も、

 

「Dragonがカイトを取っちゃう! やめて、その子はあたしの子よ!」

 

と叫んでいたそうです。
 
散々好き勝手なことをしてきたユリに、親権は絶対渡さないって言ったこと=連れ去ってもうカイトに会わせない、って話じゃないだろう。
自分が平気でカイトを振り回すことができるから、僕も同じことをやるはずだと思ったのか。
それとも単に、意識を失くした頭で見た、おかしな悪夢のせいなのか。
 
僕にはわからない。
 
 
でも、とにかくユリが意識不明でもそんなことを叫んでいると知っていたユリ側の家族が、僕にカイトの面倒を任せるはずがなかった。
理性的に、何をどう説明したって、僕の言い分を聞くはずがなかったんです・・・。

 

 

続く

 

 

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