行った時期2025.3.10 ~ 3.18
周囲約4㎞ 人口約50人 八重山諸島で唯一観光化されていない島、鳩間島へ滞在してきました。観光ガイドにもあまり載っていない島です。ここではメジャーではない鳩間島に興味がある方、来島してみたい方へ参考になるような旅行記を書きます。
仕事の年季が明けてお金は無いけど時間ができた私は、悲願だった鳩間島への長期滞在の一人旅を考えましたが初めての島なので取り敢えず今回は1週間の滞在を計画しました。関東から1,990㎞の島旅の始まりです。
私が鳩間島に行きたくなった理由は、羽根田治先生のエッセイを読み、島の文化、暮らしに感化されたから。どうしてもこの本の物語の中に飛び込みたかったのです。
「パイヌカジ」羽根田治著 ヤマケイ文庫
興味のある方は読んでみて下さい。読みやすくユーモアも織り交ぜて鳩間島を紹介していますよ。(鳩間島の20年以上前のお話しです)
関東出身の羽根田先生は鳩間島の家と那須のオフィスとを行き来しているようです。
まだ底冷えがする羽田から飛んで温暖な石垣島へ着いたのは3月10日18時。
石垣島で安ホテルに前泊して次の朝に石垣港離島ターミナルを出港します。
ただし冬の時期は鳩間島便フェリーの欠航率は高く、ここ2か月間の状況をつぶさに独自調査したところ約80%の欠航率 簡単には行って来れない覚悟の渡航です。
春から夏のシーズンは鳩間付近の風は南風に代わり
欠航率もぐんと下がり行きやすくなるようです。
フェリーの年間欠航率60%~70%の日本一到達困難な島として有名な「青ヶ島」があるが、ヘリの運行が無い分ある意味「鳩間島」の方が日本一到達困難な島と言えるのではないだろうか。。。
〇補足
因みにこの同時期、西表島(大原港)・竹富島・小浜島・黒島便はほぼ欠航無し、波照間便は欠航率約60%前後でした。(独自調査)
1日2便、八重山観光と安栄観光が午前と午後に各1便ほぼ近い時刻に出航しますが、シケ時にも頑張る安栄観光のみ出航することがたまにあります。
また、一日おきに出る大型貨客船という手もありますが、高速船欠航時はほぼ同時に欠航となっていることが多く期待できません。(独自調査)
案栄観光 https://aneikankou.co.jp/condition/past
八重山観光フェリー http://yaeyama.co.jp/operation.html
フェリー会社や島の人たちは風予報Windyを見て予想を立てています。(
冬の北風時はほぼ欠航)https://www.windy.com/ja
そのほかの手段として
・小型の郵便船という手も他のサイトにちらほらありますが、ようは便乗です。通常、公に人を乗せるものではありません。郵便物の積載状況による積載量などもあるし、従来奨励されるものでもないため宿のコネを頼っても喜んで引き受けてくれることはありません。
これはいざという時の島人の交通手段、緊急脱出等の便宜の範疇と考えましょう。鳩間島の事情を知ったる来島常連さんになってから可否選択できるものと思います。
・傭船(チャーター便)については宿の人に紹介してもらうしかありませんが、当該日時に船を出せる人がいるか否かにもよるためこれも現実的ではありません。
明朝起床して居ても立ってもいられず、
石垣島はまだ暗い朝6時に離島ターミナルにやってきました。
安栄観光だけが6時に開店していたので尋ねたところ、本日の鳩間島便は出航するとのこと。ホッと安堵してさっそく乗船券を買い天気の神様に感謝です。
出航前に横のみやげ屋を覗くとお土産品に鳩間島の文字のつくものは見つかりません。観光から外れているのが見て取れます。自然と文化を守る鳩間の島人も強く観光化を推してないし、まーそれがいいのですがね。
さていよいよ石垣島を出港して憧れの鳩間島へ向かいます。
シーズン中は西表島(上原港)への来島者が多いため満員になると乗船できません。
乗船券の事前予約が必要になるので要注意です。
航程は高速船に乗り西表島上原港経由で約1時間。ほとんどの乗船客は西表島上原港で下船して残った乗船客はまばらです。それもほとんどが日帰り客のようです。私にとってこの島は泊まることが貴重な体験となるのですが、人それぞれ...。
西表島上原港で下船する乗船客の人々。
鳩間島へ向かう残った乗船客。
上原港を出て20分ほどで鳩間島です。
いよいよその島の全景が見えてきました。9時半頃には入港予定です。
宮古島のように珊瑚礁が起伏して出来た島なので山はなく平たい島で、珊瑚のアルカリ性土壌を嫌ってハブは生息していないとのことです。
ついに鳩間島上陸!
とうとう鳩間島にやって来ました。小さな桟橋、朝の鳩間島港。
正式名称「いとま浜ターミナル」に降り立つと宿泊予約をしている宿「マイトウゼ」のオーナー建次さんが出迎えに来てくれてました。
自分では前記のエッセイで主人公の勝手知ったるおじいであり、初対面にして無意識に私から「建次さん、こんにちは!」と歩み寄り握手を求めては親戚みたいな図々しい態度にハッとしましたが笑顔で迎えてくれた建次さんでした。
乗ってきた船で前泊の宿泊者が帰るとのことで見送ってから港を後にします。
私と行き違いで帰る宿泊者を見送る建次さん。
「パイヌカジ」を読んでやって来たことを告げると
「羽根田さん来てるよ。帰って来てる。うん、会えるよ。」
と建次さん、うれしいことを言ってくれました。こりゃ楽しみだ!
朝夕の食事の時間や昼の食事の店をおしえてもらいながら海を背に建次さんと宿までゆっくりと5分弱歩き、泊まりたかった「ペンション マイトウゼ」に到着。
食堂はここから港へ戻るように5分強歩いた浜辺沿いにオーナーの母屋と共にあります。
ペンション マイトウゼ。
室内はこんな感じ。基本ベッドが2つ。
因みに別棟にある食堂の外テーブルから見た風景。(海を見ながら食事します)
ペンションと謳っていますが、実際はプレハブのバンガローが9棟。トイレはじめ水回りは共同となっていますが、1棟貸しの部屋は完全なプライベートが約束されます。
(マイトウゼの詳細は鳩間島宿泊事情として別途ブログで紹介したく思います)
敷地内は静かです。
「本日の宿泊者は何人くらいですか?」
「あなたが宿泊している間、今のところ宿泊者はいないので一人でゆっくりできるよ。荷物おろして一息ついたら母屋の方へでもいらっしゃい。」
と言い残すと建次さんはゆっくりとした足取りで来た道を戻っていきました。
ドラマ「瑠璃の島」のバックタイトルにもなった島のメインストリート。
港の向こうには西表島が見える。
なぬ?誰もいないの?? 後ろは森、隣は空き家、向かいは廃屋に囲まれた静かな敷地にある9棟のバンガロー群で昼夜ボッチなの?
一人でゆっくりよりも心細い。。。 オキャクサン、ダレカキテクダサイ
島内を軽くお散歩
一息ついて早速海を見がてらおしえてもらった食事処へ昼飯を食べに行きます。
道すがらの静かな港。港なのに鳩間瑠璃色ブルーがきれいに澄んでいます。
水深4m~5mくらいでしょうか?真下を覗いていると吸い込まれそうで高所恐怖症の私の足はガクガク震えてきます
この島では基本的に昼飯をセットにしていない民宿がほとんど。
シーズンオンはあざて家、ふぁいだまやー(宿寄合の食堂)の2件が昼時確実にやっているようです。
シーズンオフはあざて家のみ開店。
グーグルマップに載っている他の食事処は全て閉店・廃業していました。(シーズンオンになったら開店する店もいくつか出てくると思いますが)
飲み物の自動販売機(ビール有)は島内に2箇所。簡易郵便局前と民宿あやぐの入口。
島には店は無く、1軒あった売店は数年前に無くなっています。
建次さんにおしえてもらった昼食の「お休み処 あざて家」にお邪魔しました。
先客が2名ほどいます。大阪の20代の男性と千葉の女子大生(大学院生)。2人とも一人旅のようです。まずは昼からビールを頂いていると食べるかい?と奥さんから肉じゃがや今朝店主釣りたてのバチマグロ(?)が皆の前に出てきます。弾力のあるマグロの赤身旨し!先客の2人と店主を交えて会話も弾みビールが進みます。
お休み処 あざて家。(後にご紹介の同宿者ソムリエさんこと中嶋健治さん撮影)
店主の東里さんから色々な話を聞かせてもらいました。
この島にはカラスはいません。(お隣の西表島ではカラス被害に苦慮しています)
それはむか~し、この島は大津波か何かで一度沈んでいて稲作が出来ない土地となり、一時期島人はみな海を渡りお隣の西表島で田んぼを借りて収穫した稲を持ち帰り干していました。その頃は鳩間島にもカラスやスズメもいたそうですが、やがて稲作の出稼ぎを辞めたのち食料が無いためかカラスもスズメもこの島では見かけなくなったとのこと。勉強になりました。
女子大生が質問。そこら辺を歩いている野生の野良ヤギと飼っているヤギがいるがどちらが美味い?
店主はいい質問とばかり野良ヤギの方が柔らかく旨味があるなー、海水を舐めているのできっと違うんさーとのことでした。
この島ではハブはいないし、危険な生物がいるとしたら野良ヤギ。人を見れば逃げるが50㎏以上あるのもいるし威嚇されて体当たりされたら恐ろしいさー、とのことでした。
この島でお墓はあまり見られません。殆どが西表島や石垣島に移されて、島内には本島とは違う小さなお墓が数基隠れるようにひっそりとあるらしいです。
ここあざて家は「お休み処」で「お食事処」ではありません。
港の近くだから観光客がよく前を歩く。休むところもない島だから食事をしなくても休んでいったらいいさーと思い「お休み処」にしてこの冬も開けているんさー、と人懐っこい店主と奥さん。ありがたいお店でした。
とりわけ、ここの 島カレーは実においしい
連日このカレーを食べに通いました。
エッセイ「パイヌカジ」の話になり、興味を示した女子大生へ奥さんが「(著者の)羽根田さんが今帰って来ているから本を買ってサインをもらえばいい」と勧めます。
私も持参した本にサインもらいたい。店を後にして女子大生と2人でおしえてもらった先生の自宅まで押しかけましたが留守のようで、この島の歴史古い簡易郵便局で事情を話します。ここには健二さんの娘さん夫婦が勤めていて、感じのいい娘さんが言うには隣のマイトウゼの食堂に今羽根田さんいるはずとのことでした。
勇んで行くといました。本の登場人物たちが昼下がりから飲み倒している。これをこの島では「ぶがりなおし」といいます。ひと仕事終わってのお疲れさんの飲み会。これが毎昼何処彼処で催されると書かれていましたが、事実初日にして簡単に目撃してしまいました。
海辺に佇むマイトウゼの食堂兼母屋の全景。
この時期の朝はテラス、夕は室内で食事します。
本で写真を見て顔は知っています。羽根田先生、佐藤アキオさん、建次さんがだいぶ飲まれています。挨拶傍ら女子大生が本を買い求め、私とともにサインと握手を先生に頂くと、建次さんは女子大生を連れ立って来たことにご満悦のようで、すこぶる機嫌よく私たちにそれは優しい顔で話しかけてくれました。(本の通りの建次さん、親近感がわきます)
夕方の船で日帰りの女子大生と私と入れ替わりで帰ってしまう常連の女性の宿泊者を見送りに港まで行きます。
手を振る建次さんと娘さんと羽根田先生。
時間を持て余したので近辺の海を散策してバンガローに帰ると、50代の細身で背の高い眼鏡をかけた男性が隣の部屋からおもむろに出てきました。
想定していない出来事に不覚にもぎょっとして後ずさりし、慌てて挨拶をすれば先ほどの船でやってきた宿泊者で本日1泊されるとのこと。
聞いていなかったけど、取り敢えず今晩は心強くウレシー
日没は6時50分頃です
7時の夕食前に宿の食堂近くの堤防まで一人夕陽を見に行くことにします。
昼にあざて家で出会った大阪のお兄さんが先客で来ていました。本日は「民宿 寄合」に泊まられるらしいです。
西堤防に行くともっと夕陽がきれいだから一緒に行きません?
と誘われましたが、残念ながら初日の夕食が間近なので諦めお断りしました。
ホント、人がいません。静かな波音だけです。
ここ東堤防から見る夕陽も素晴らしく、
「いとま浜ターミナル」を前景に落陽してゆく様は鳩間島オリジナルの絶景です。
食堂では先ほどの50代の同宿者とふたりでの夕食。
話を聞くとホテル関係のお仕事をされている方で、各種のソムリエの免許を取得されているとのことです。
全国の有人島制覇を目標にされ、今回は有休を利用して八重山諸島を回っているようで明日はここから西表島の孤立村「舟浮集落」、次はツアーでしか行けない秘島 新城島(パナリ島)に行かれるそうです。
中々のマニアとお見受けしました。
地元産の魚と野菜をふんだんに使ったおかみさんの手料理はすこぶる美味く、朝晩とも毎回メニューを変えては堪能させてくれます。
うん、実に味付けがいい。食の細い私ですがついつい箸が進み大満足でした。
今晩は宿主建次さんが島の会合でコミュニティー会館にて飲まれているとのことで、今宵は食事をしながらソムリエさんと2人で飲みました。その際、ソムリエさんが泡盛のボトルを1本入れてご馳走になってしまいました。(アリガトウ ゴザイマシタ)
半分残ったボトルは連泊する私が頂けることになりお礼を言って、食堂を後にふたり街灯の無い真っ暗な道をバンガローへと歩いて帰り、寝床に就くのでした。
南の夢の鳩間島 ② へつづく