元主人は淡々と話し出した。



「アプリで知り合った人と何人か付き合ったけど長続きしなかった。


この世にあり以上の女性なんかいないことが分かった。」




「えっと‥‥いったい何の話???」




「ごめん。長くなるけど全部聞いて欲しい。


そこでネットで見つけた復縁アドバイザーに相談した。」




‥‥また胡散臭そうなの見つけたな。




「ガツガツ行ったら逃げられるから、絶対に行かないようにとアドバイスもらった。


家族構成を伝えたら、是非犬か猫を飼うように言われた。


そしたら子供達の心をガッチリ掴めるだろうって。


半信半疑だったけど、本当にその通りになった。


間違ってたらごめん、ありはチョコを女性だと勘違いして妬いてくれたよね?」




「うーん、まぁ多少は。」




「やっぱり。少しずつ心を開いてくれるのが手に取るように分かった。


あの事件は本当に前田さんが1人でしたことだから。


公園の水飲み場にいたのは偶然だったらしい。


俺達のことをジーッと見たのは、俺がありの元旦那なのか、新しい彼氏なのか、はたまた不倫相手なのか興味本位で見ただけだって言ってた。


ただ‥‥


宅配便を利用した時、偶然前田さんが配達に来たんだ。その時にLINEを交換し、あるお願いをした。


お金を払うから、ありにつきまとって欲しいって。

 

そしたらずっとこの家に住めると思ったから。


結果大成功。


お酒を飲ませたらありの方から誘ってきたし、もういいことずくめだった。


このままずっとこの生活が続くように祈らずにはいられなかった。


でも、ありはそろそろ帰るように言った。


あんなに楽しかったのに、あんなに愛しあったのに。


昨日前田さんからこれ以上は無理だって連絡が来た。


そのことをアドバイザーに相談した。


その返事がこれだったんだ。」




「そっか。まんまと嵌められたんだね、私。」




「ごめん、本当にごめん。俺はただありと子供達と一緒にいたいだけなんだ。」




「分かった。ちょっと考えさせて?」




「‥‥ここにいてもいい?」




「それはダメ。とりあえず今すぐ荷物をまとめて帰って。またこちらから連絡するから。」




「嫌だ。」




「お願い、1人で考える時間が欲しい。」




「嫌だよ、だってありは‥‥」




「ガツガツ行くのはダメだってアドバイザーが言ってたんじゃないの?」




「‥‥‥」




「分かったならすぐに帰って。」




「分かったよ。」





荷物をまとめて元主人は帰っていった。