2009/05/03 | ダダ散文

2009/05/03

心持つ歌声が聞こえていたのだが


そろそろと


歌声は聞こえなくなった

ああ

君は辛いのだね



すみれの花が

小さなすみれに埋め尽くされた
原っぱがね


確かにあったのだが


私はそこに存在し
私はそのすみれを確かに見ていたのだが‥‥



声の持ち主は

最後まで歌いきりたかったのに違いない

違いないんだ

私は確信出来た


けれど歌声は徐々に
掠れた声になって

小さく
小さくなって


私は彼の現状を知った


苦しかろう
苦しかろうよ


消え入っていく
その歌声と共に

彼の精神も
小さなブラックホール


世界の小さな割れ目に
吸収されてしまった


もとよりならば
もう彼には何も無いのに


無ければこそ
彼は歌っていたのに‥‥


吸収した壁からは
どんなに耳を澄ましても
何も聞こえず


彼に音沙汰無し

彼に音沙汰無し‥‥



すみれの花畑を
私は確かに見たのであって


そこに

すみれも
この私も居たはずなのに



今やはや

目を閉じて
思い出しても

思い出しても


すみれは思い出せるのだが

ほんに素朴に自然に存在してた


確かに幼き日私は
一度と知れず
それらを見ているのだが‥‥


今はもう
その情景を頭に思い描けるだけで


そこに居る
幼い子供の
顔は見れない