父の医療過失事故の全容がわかった今、
改めて、
事故発生当時、主治医が僕らに対して
言っていた言葉やその時の表情など、
詳細に思い返すと、
彼は役者だったなあ、と思います。
当然、彼はわかっていたはずです。
一方、僕ら家族は、
白目になって昏睡する父の姿に驚愕し、
何にも考えられない状態でした。
彼は極めて落ち着いていました。
オドオドすることは全くなく、
駆けつけた僕ら家族に
不信感や隙を与えるような態度は
少しもありませんでした。
お人好しの父が築いた家族らしく、
僕らは誰も主治医に
なんでこうなったのか、
と詰め寄ることはしません。
とにかく父の命を助けて!
少なくとも僕はその一心で
一生懸命頭を下げました。
もしかしたら直感的にこれはおかしい、
と感じていたのかもしれませんが、
医療のことなんか
とにかく何にもわからないのですから
それを口に出して言うことは
ありませんでした。
あの時の主治医の態度、
もし、僕が彼なら絶対に
あんな落ち着いてはいられないでしょう。
家族のあんな様子を見て
なんで事実を語らずに
いられるのでしょうか。
今思えば、
あれは経験値がなせる技と思います。
彼はこれが初めてではないな、
今、僕はそう思っています。
そして、
彼は医師の素養のひとつを備えてると
認めざるを得ません。