お前の好きにすればいいと思うよ
私が膝を抱えているときに
あなたはいつもそう言った
どうすればいい
お前の好きなようにしなよ
例えば小学生
好きなひとができた
けれどもうすぐ引越しらしい
どうしよう
密かに心の中では
これがチャンスだとも思っていた
一歩踏み出せなかったのは
拙い言葉で逃げ出すことを
小さいプライドが許さなかったからだ
けれどもあなたは
「どうしたいの?」
頬杖をついてそう言った
私は頷いて手紙を書いた
結局それは渡せなかった
最後の日、夕方まで遊んで別れた
例えば中学生
部活で結果が出せず
辞めてしまいたいと打ち明けたとき
どうすればいいかな
密かに心の中では
もう辞めてしまえと
言われることを望んでいた
それができなかったのは
決断する勇気がなかったからだ
けれともあなたは
「好きにしなよ」
新聞を片手にそう言った
私は不貞腐れて家を出た
結局そのまま部活は続けた
手のひらには今でも豆がある
例えば高校生
バイトで貯めたお金で
初めて自分の靴を買いたいと思った
白のスニーカーと黒のスニーカー
どちらにしようと問いかけた
密かに心の中では
どちらも欲しいと思っていた
それができなかったのは
あなたに甘えがあったからだ
けれどもあなたは
「好きな方を選びなよ」
妙に優しい顔でそう言った
私は眉をひそめて財布をしまった
結局買ったのは駅前のケーキだった
苺は思ったより酸っぱかった
例えば大学生
スーツを着て就職活動
何枚も書いた
いくつも歩いた
それでも駄目だった
やりたいことが分からなくなった
社会って何だ
夢なんてない
どうすればいい
心の中ももう何もない
リビングの机にうな垂れた
あと少しで涙が落ちる
あなたは大きな欠伸をして
「まだ悩んでいれば」
慰めるわけでもなくそう言った
私は嗚咽とともに泣いた
結局その日も面接に行った
何が何だか分からないまま
私の好きなようにしなよ
あなたは道標ももたず
背中をそっと押してくれた
あなたは私が悩んでいるとき
それを肯定して
あなたは私が振り向かないとき
それを否定した
私は好きなことをしてきた
私が選んだことをしてきた
私の人生は私のものだった
「どうしよう」
悩んでいる君に送るのは