僕は雨の夜に死んだ
滑り落ちるように
体から力を抜けば
空は飛べた
生きようとしなければ
夢は叶うのだと
残った頭のカケラで思った
勢いで死んでしまったことを
幸せに思う
あと数秒、思いとどまってしまったら
きっと世界に長居して
君はどこかへ消えてしまうのだ
自分の命を悟った君が
哀しげに笑うので
しょーがなかった
君が僕を忘れるのなら
この世に愛は無くなってしまうから
君は僕を殺してしまうから
僕は君を殺せない
憎しみと愛情の赤がどろりと
胸の穴を埋めていく
僕は雨の夜に死んだ
死んだ、と思ったのは
地面に落ちるコンマ一秒前
ぴんぽん、と正解のチャイムが鳴って
同じタイミングでブーイングをあびる
僕は雨の夜に死んだ
死にたいわけがなかった
明日は明日で鯖の塩焼きでも
食べたいなあと思っていた
空は飛べた
飛べた気がした
君がいない世界を飛んだ
僕は鳥になった
気がした
生きることを諦めたその一瞬に
人の夢は一つ叶う
愛は永遠を悟り
静かに眠りにつく
記憶の片隅に
君を焼き付ける
君がやがて忘れていく世界の果てに
鳥になって
飛び込んでいく