13年ぶりに外の世界へ戻れる喜びで犯した罪の重さは消えてしまっていた。
大きな門が開いて遂に出所。
刑務所の周りは静かで何とも言えない空気が漂っているらしい。
ひろしさんは大きく息を吸い、
そして吐いた。
白い息は真冬の寒さを感じさせた。
ひろしさんは、辺りを見渡した。
… … …
ひろしさんを迎える者は誰一人いなかった。
急に孤独感がひろしさんを襲った。
ひろしさんはしばらく待ったが、身を切るような寒さに歩きはじめた。
迎えの車が来るのを歩きながら待った。
何台も何台も車がひろしさんを通り過ぎた。
どれ位歩いたのだろう。
目の前に一本の煙突がひろしの目に止まった。
『
』のマークはひろしさんの疲れたひろしさんに力を沸かせた。吸い込まれる様に煙突目指して歩いた。
13年ぶりにゆっくり入るお風呂はひろしさんに生命力を吹き込んだ。
お風呂がこんなに気持ち良くありがたいものだと初めて知ったと話した。
長風呂を出た時、目の前の古い居酒屋が開店の準備をしていた。
ひろしさんは何の躊躇も無く居酒屋の扉を開けた。
中ではカウンターで仕込みをするおじいちゃんと店内を掃除するおばあちゃんがせっせと働いていた。
準備中にもかかわらず老夫婦はひろしさんを快く迎え入れた。
久しぶりの温かい食べ物は格別で涙が出たと言う。
美味しい料理にどんどんお酒がすすんだ。
元々お酒が大好きで大酒飲みだったと笑った。
ひろしさんのグラスは空になっていた。
僕は三本目のビールを抜いて注いだ。
結局ひろしさんは閉店までその店で飲んだという。
外へ出るとカラオケの音がどこからか聞こえてる。
無論歌声の聞こえる方へ足は向かっていた。
カラオケを何曲も唄っているうちに時間の経つのも忘れたという。
郊外のお店は閉店時間も早く又も閉店まで飲んで唄った。
ひろしさんはタクシーに乗った。
ひろしさんの帰る場所は、あの場所しかなかった。
ひろしさんの犯した事件でひろしさんの身内達はみんな居所がわからなくなり、ひろしさんの母親は、ひろしさんが服役中に亡くなったと話した。
ひろしさん帰る場所は、
ただ一つ…
あの「組」しかなかった。
途中電話ボックスを見つけ、要約組事務所へ電話をかけるた。
何度かけても、アナウンスが流れるだけだった。
酔っ払いる事が不安感をかき消した。
静かな町の暗い道から、少しずつ明るい街へと変わって行く。
懐かしい街の名前が標識に書いてあるのを見て気持ちは早まったと言う。
懐かしい景色と初めて見る景色が入り混じっている。
ひろしさんは窓の外を見ながら目を白黒させた。
遂に組のある街に入った。
西成区にあるその一角だけは時間が止まったかの様に、13年前とほとんど変わってはいなかったという。
懐かしい酒屋の前でタクシーは止まった。
酒屋の横を入れば組がある。
タクシーを降りたひろしさんは身嗜みを整えた。
すぐそこに組がある……
…はず…だった… … …
…つづく