名家・五斜池家に起こる戦時下の日本では考えられない非日常な話。

藤吉郎・フサ夫婦。五斜池家長男夫婦。夫は精神病院を営むかたわら、愛国心をなくし、戦意を喪失する薬を試作。調に投与するが、結果、妻への愛が無くなっていく。そんな二人をみて、罪滅ぼしから、戦後も二人を家に置いておく。しかし、旦那の状況は悪化し、ますます妻への嫌悪感が募っていく。最後には、調に薬の投与をしていたことに対して、土下座もするが、それ以外何も出来ない。しまいには、経営悪化から、病院も移転するが、そこから再出発する。
定夫。五斜池家次男。軍の役人・菊竹の身代わり(代わりに会議等に参加)をして高額の謝礼をもらっていた。が、戦後にもそれをやって、命を狙われる羽目に。その一方で、等を殺した事に、罪悪感を感じ、1日3回線香を上げていた。そんなある日、逃走中の菊竹が五斜池家に乱入。菊竹の妻が死んだことを知り、五斜池家で拳銃自殺を図った事で、一応の決着がつく。
京。五斜池家四男。雪江の妊娠を期に結婚。しかし、放蕩ぶりは変わらず。だが、その一方で戦争孤児に食べ物を配っていた。兄弟の父親が謝った時に居合わせず、全ての事にふてくされるが、等が好きだったことを雪江に告白。借金は相変わらずだが、食べ物を配っていたことに対して警察から感謝状が。家を出る日に、京が探していた犬を探して等が精神病院に忍び込んだことが分かり、定夫に自分にも非があったことを伝える。
洋平・オト兄妹。妹は妾として、五斜池家でやりたい放題。最後まで、金を搾り取る。一方、兄は酔った席で好きと言われた雪絵に恋心を抱き、結婚・出産しても雪絵を慕い続ける。そして、最後まで裏表のない役。
雪絵。女学校の元・教師。京の遊び人ぶりにヤキモキしつつも、最後まで夫婦。
調夫妻。戦役から逃れるため、藤吉郎に偽の診断書を書いてもらう。肉を保存する冷蔵庫に閉じ込められていた藤吉郎を救った恩人。後半で、そこに女性と一緒だったことが発覚。しかし、藤吉郎の試薬で夫婦仲がおかしくなるが、最後には、雄吉の感情が乏しくなるものの回復の兆しがみえる。
権田。雄吉の前に試薬を受けていた患者。最後は自殺。
別府。その権田の自殺を気に五斜池家の使用人を辞める。そして、藤吉郎を殺そうと屋敷に戻るが失敗。そのまま逃走。
銀一郎。藤吉郎・フサ夫婦の長男。かなり自堕落な生活をしているが、衝動的に精神病院の隔離患者のドアを明け、患者を逃がす暴挙に。それでも、藤吉郎から怒られないことから嫌気が差すが、調園子に優しくしてもらい、藤吉郎に謝る。その後、幼いころのように藤吉郎の白衣を着るが、藤吉郎と勘違えた別府に刺される。一命は免れるものの入院。そして、父親とのわだかまりもなくなる。
山本。五斜池家の家政婦。これでもかっていうくらい絵に書いた家政婦。実は資産家のお嬢さんで、実家から逃げていた。また、かなりの金を溜め込み、五斜池家の借金を肩代わり。

終幕。それぞれに一応の決着がつき、家を出ていく兄弟。最後に三人で墓参りに行くことになるも、京は乗り気ではない。そんななか、定夫から犬の件を聞き、京にも原因があったことを知り、三人で泣き、幕。


登場人物全てにバッククラウドがあり、まとめるとこんな内容。


北村。映像と変わらず。あの声質のままだが、意外と後ろまで聞こえる。これは開幕2日目だから?放蕩キャラはイメージそのままなので、あて書き?そして、泣きの演技が妙にハマる。

中村。一人、蚊帳の外キャラ。そして、声が無駄にデカい。ただ、ポイントは押さえている。映像では、冷徹・頭脳派な役が多いので、こういうノーテンキキャラは新鮮。舞台で、そういう演技をしてもわかりずらいかもしれないが。
ともさか。初。舞台でもあの発声というのが、びっくり。ただ、こちらも意外に後ろまで聞こえる。好みな台詞廻しなので、他の作品でも観てみたい。

岡田。ある種のDVキャラ。どちらかというと、Mキャラなイメージがあるので、Sキャラな役をあてる脚本家の意図が気になる。妻へのDVっぷりは、ケラ作品かなと思わすが、岡田氏がこういう役をやると、ネチネチと大変にイヤな役に。

犬山。その岡田氏からDVを受ける献身的な妻。ただ、それを犬山さんが演じるとただ可哀想という役にならない。これはキャラ的なものか?そして、時折仕掛ける笑いは全てツボ。

みのすけ。ナイロンでは大倉氏が一番灰汁の強いキャラだと思っていたが、それに匹敵する灰汁の強さ。登場する三役とも、見事にツボに入る。

小松。このメンツでは若干、弱いかも。それでも、元・精神病患者なので、ケラ特有のブラックな笑いは全て担当。

池谷。この人もなかなかの飛び道具役者。今回、久々にケラのオリジナルキャラで観たが、前回の『砂の上~』よりも異色さがパワーアップ。女優でこういう役をこなす人はあまり観ないので、貴重かも。

長谷川。このメンツでは地味過ぎる。実は結構、舞台で観ているがイマイチ印象に残らず。というか、この役を削ってもイケそうな気が。

緒川。不倫・妾というキーワードが妙にハマる。今回は奔放な女性だったが、ともさかさんの役とか犬山さんの役で観ても、面白いかも。

山崎。相変わらずの安定キャラ。脚本家がこういう人と位置づけている感有り。それでも、どの舞台でもこういうキャラか。敢えていうなら、あの笑顔で岡田氏にかなり酷い実験をしているというギャップが凄いかも。

高橋。ケラ作品で観るとは思わなかった。実は、今回の観劇の一番の目的だったが、戦前の裕福な家の奥さんぶりが同にいっている。

生瀬。山崎氏と同じく、いつものキャラ。なので、特筆することもないが、作家役の意味がわからなかった。


前回観たオリジナル作品『砂の上の植物群』に比べると大変にわかりやすい作品。また、伏線の張り方や回収の仕方が大変好み。役者にハズレが無いのも良い。ケラ作品として観ると物足りないかもしれないが、役者目当てだとこのくらいが丁度良い。劇評で扇田氏が『櫻の園』(チェーホフ)と似ていると書いていたが、それを読んで納得。確かに、観劇後の感覚は翻訳物を観た感覚にとらわれる。
また、その劇評で内容を削れると書いていたが、火星人襲来のエピソードは削れそうな気が。勿論、実験により妻への愛が消えた瞬間、犬山さんの心情を表すラジオ放送(全てはウソでしたという内容)の演出は大変に良かったが。

音楽が斎藤ネコ。といっても、弦楽器を多用した音楽といったことしかわからないが。それでも、オープニングや暗転時の弦の音色は昭和の雰囲気と世間から隔離された屋敷の世界観にマッチ。