
たまに日記らしい日記を書く。
当たり障りがある内容だけど、人生経験として敢えて。
脚色なしで事実だけを淡々と。
12月20日(月)曇天
約3年勤務した中で一番軽快な気分で出勤。もうクリスマスか…あっという間に大晦日からの正月だなぁ、と思いながら一年の速さ、今年あった事に思いを馳せる。最近車窓の外に流れる雪景色を眺めながらBlock Partyの曲を聴くのが好きだ。週明けの朝、管理職会議の最後に社長から「○○君、何かあるか?」といつも通り問われ、「特にありません」とニヒルな笑みで答えた。その場で言いたいことは何ひとつ無かった。午前中で私物の片付けを済ませ、仕事データを全てポートフォリオ用にiPodへコピー。80GBの容量のうち半分近くを占めた。やばい。自宅MacのHDDが満杯に近いから入らない、使わないデータ外付HDDに移行して整理しなければ。書類に著名、押印。保険証を返す。任意継続するか否かまだ決めかねている。国保と大差がない。
昼休み、Fさんがランチに誘ってくれたので行く。自分の分払おうとしたけど、奢ってくれた。もう辞めるので、こうなった経緯や会社への考えを粗方素直に話すと、「言ってる事はよく解る。この会社は○○にとって牢獄みたいなもんだったんじゃないか?」と苦笑された。そこまでは考えていなかったけど、そうだったのかもしれない。現にFさんも辞められるなら辞めたいのが本音だろう。でも養っている妻子がいて辞める訳にはいかない。年齢的にも再就職は難しい。まだ自由に動けるだけ自分は幸せだと思った。「でもこれだけ気にかけてる人がいるっていうのは、人徳だよ。俺は寂しいけど、ここで寄り道した分も頑張れよ。また会おうな」と手を差し出してくれた。礼を告げて手を握った。
午後、仕事を済ませて時間を持て余していると急に肩を叩かれた。誰かと思えばオペレーターのYさん。とても深刻な表情だったが、普段仕事の用事がなければ絶対事務所に来ないのに、わざわざ来てくれたのが嬉しかった。「○○、今日で辞めるの?さっき聞いてびっくりした」『知らなかったんですか?今日で最後ですよ~』「そっか……。でも良かったね。これでストレスも無くなって楽になるんじゃない?」『ははは、そういう話はここではちょっと』「大声では言えないね。でも良かった、頑張ってね。今まで何もしてあげられなかったな」『いや、何言ってるんですか。こうやって気にかけてくれるだけ有り難いですよ。Yさんも頑張ってください』「俺は頑張らないよ」『頑張ってくださいよ(笑)』という会話を交わした。でもYさんはやるべき事をちゃんとやる人だと思う。
それをきっかけに、最後のけじめとして一人一人に挨拶しに行く。工場から事務所まで。反応は様々だったが、大半の人は暖かい言葉をくれた。表面的で感じが悪い態度を取るたまにいたけど、まぁ当然だろうと思った。私はまともな価値観で信用できると判断した人にしか、愛想が良い態度はとらなかった。最初から一定期間過ぎたら辞めると思っていたし、下手に好かれるとデメリットしかないというのを判っていたので(前任の人が全員に愛想良くして「好かれるストレス」で参っていたのを知っているから尚更)、人間性がおかしいと思う人は仕事に支障がない程度に避けてきた。その結果として当たり前の事だ。好かれたくない人からは、好かれるより嫌われる位の方が精神的に楽なのだ。「相手が誰であっても嫌われるのが怖い」という感覚が、学生時代から無い。万人に好かれようとして行う社交辞令や表面的な言動は、なるべく避けたいというのが私なりの正義感にある。捻くれてるけど間違ってるとは思わない。
Nさんには「○○の字かわいくて、たまにファイルに挟んであったメモとか捨てられなくて、いつの間にかいっぱい貯まっちゃったよ~。俺きもい?」と報告をされ、緩く引き笑った。保護者の字としか言われたことないよ。「土曜日送別会あったんでしょ?幹事に誘われなかったけど行きたかった。時間あったら飲みに行きたいと思ってたんだよね、みんな誘って年内に飲もうよ」と言ってくれた。「寂しくなるなぁー残念だなぁー」と軽い口調で言われて「それ本当に思ってる?思ってないでしょ?(笑)」と冗談で返しつつ、気持ちは嬉しかった。
一番話す機会が多くて個人的にも遊んだり飲んだりしてたM先輩の元へ。『最後だから全員に挨拶して帰ろうと思って。正直話したくない人もいるけど、その奥にいる人に話しかける前にスルーするのは感じ悪いし。○○さんにはすげえ侮蔑の表情向けられたけど、笑顔で頭下げてきた。いやあ、いい奴だなー私!偉いなー!』「自分で言ったな!(笑)その通りだけど。最後だし、俺のとこで思うこと全部吐いていきなよ」『この辺の空気がどんどん紫色になりそうですけど。まー嫌な奴だと思われてんだろうな。人の表面しか見ない人ばっかだし。私も汚染されたくないから愛想振りまかなかったし』「嫌われる要素は向こうにしかない…(苦笑)私は貴方を映す鏡です!って言ってやりなよ」『はは、言ってやりたいわー』みたいな、冗談混じりの毒舌トークを20分くらい。最後までいなくなるのを寂しがってくれた。
定時で帰る部長は、会えないからとわざわざ製版室に内線をくれて驚いた。優しさを見せられたのは、ほぼ初めてに等しかった。案の定一番感じが悪かったのは社長。目も見ないで適当に相づちを打たれ、まるで子供のようだった。何も期待する部分は無かったが、自分に都合悪くなったらこんな対応しかできない人がトップか…と思うと最早半笑いに。最近までずっとストレスの元凶になっていた(私が一番だけど恐らく殆どの人のストレスになっていた)ペアで働いていた先輩と談笑。新人君は素直で仕事もできる良い子。もっと長く一緒に働いてみたかった。「1人2人なら当たり前だけど、こんな大人数、よく集めたと思うほど悪い意味で個性強い人が集まってる会社はない。ここでやってこれたんだから、何処行っても大丈夫」と色んな人から言われ、何とも言えない複雑な気分になった。
元気よく定時で上がり。せいせいした気分で会社を後にした。土曜の飲み会にも「○○さんの送別会だから行くよ!」と来てくれたけど、一対一で自由に話したいと食事に誘ってくれたNさんと合流。口を開けば人の噂話か悪口しか言わないネチネチした性格の女性しかいなかった職場で、唯一、お互いに気を遣わず普通にまともな会話ができた信頼できる女性。20歳年上だけど、普通に友達感覚で話せる。とにかく知らないところで私を褒めまくってくれてたらしい。後々他の人から聞いて、純粋に有り難いと思った。Nさんは協調性は凄くあるけど、心にもない事やお世辞は絶対言わない人だから。凄く美味しい韓国料理のお店に連れて行ってもらう。Nさんの直属の上司の言動があまりにあんまりなもので、Nさんの心労が本格的に心配になる。一時期、見てわかる位目の下がずっと痙攣してたんだよな。決してストレスに弱いタイプの人ではなさそうなのに。辞めた方が私のためにはなるけど、居なくなってしまうのが本当に寂しいと何度も言われて申し訳なくなった。「もう辞めるから話せるけど…」と、上司に関して衝撃の事実を語られ、あまりの事に愕然とする。そしてNさんが更に心配になった。色んな荒波に揉まれて来たから大丈夫だよ、と笑顔で言われたけど。流石に書けないような酷い内容だった。しかし、人事マネージメント能力ゼロ以下にも程があるだろ…。不条理に気付いていて辞めたいと思ってるのに辞められない人達が本当に、切ない。それこそ私は何もしてあげられない。
場所を移動して立ち呑み屋へ。話題が何であれ信用できる人との会話がとにかく好きな私は、楽しくなってNさんがストックしていた芋焼酎を飲み過ぎる。悪口が好きな女性陣が陰で言ってたらしい悪口の内容の、あまりの下らなさと的外れさに、逆に面白くなって笑った。子供かよ。あの人達をモデルにしたコントできるな、と言ったらNさんが笑っていた。遠慮したけど全てご馳走して頂き、本当にその気持ちが有り難かった。帰りがけ駅構内で、改めて「あああー…!寂しい!」と叫ばれ、何も言えず腕や背中を撫でた。「またね」と言って別れる。私は久しぶりに、完全に酔っぱらっていた。3年ぶり位に二日酔いになり、半日潰した事を反省。目が覚めたら退社した会社の方々から大量の長文メールが届いていた。心遣いありがとう。
実際に体験した人にしか絶対理解できない壮絶な環境。仕事以外の部分でかなり神経すり減らされたけど、その分かなりの忍耐力や判断力がついたし、お金も得られたし、良い人生経験になったと思う。絶対無駄にはしない。下を見ればキリがないし、上を見てもキリがないけど、なるべく上を見ていたい。「世の中の人は何とも言わば言え 我が成す事我のみぞ知る」心底この句の心境だった、約3年。そして本当の頑張り時はこれから。とりあえずノンストップでここまで走ってきたので、年末年始はちょっと立ち止まって休みます。