私は幼少期から肉を苦手として

いる。理由はわからないが、

子どもの頃は肉を食べることが

できなくて、学校の給食の献立

に一喜一憂していた。

 

20代の頃に警察学校に入って、

食事をスピーディに済ませる

習慣に従って、肉を噛まずに

飲むようにした。食べ物の

好き嫌いを言えるような環境

ではなかったからだ。

 

そんな私が子どもの頃に

ずっと食べたいと思って

憧れていた食べ物がある。

それは「カツ丼」だ。

カツ丼に関心を抱き始めた

きっかけとなったのは、

おそらくアニメのミスター

味っ子を見たからだと思う。

 

日の出食堂で味吉陽一君の

カツ丼を食べた時の味皇様の

反応が凄かった。何て大袈裟で

面白いアニメだったことだろう。

(主題歌もとても良い。)

 

そんな私が、初めてカツ丼を

食べた日のことは、今でもよく

覚えている。私は小学校の帰りに

友人のM君の家に立ち寄る機会が

あった。学校で出たコッペパンが、

M君の家で彼のお母さんがオーブン

で温めてくれると、サクサクした

珠玉のパンへと生まれ変わるのだ。

 

ある日、M君のお母さんから

「カツ丼を作るからうちにおいで」

との御連絡を頂いた。私は電話で

M君のお母さんに「僕は肉を食べれ

ないんですけど・・」と明かすと、

「知ってる。でも、うちで作る

カツ丼なら食べれると思うよ」

との返答が返って来た。いったい

どういうことだろう・・?

 

いざ、M君の家へ。少し話が

逸れるが、私がM君の家に向かう

途中に、ビックリマンチョコで

ヘッドのブラックゼウスが出て

感激した。なおさら、この日の

ことが印象深くなる。

 

M君の家に着くと、そこには

きれいな丼茶碗が2つ並んでいた。

そしてそこに炊き立ての米が

運ばれて行った。驚いたのは

次の瞬間だった。何と、M君の

お母さんが袋一杯の駄菓子の

「ビッグカツ」を出してくれた

のである。(1枚30円ぐらいだった

かな?)

 

 

M君のお母さんが宣う。「この

カツでカツ丼を作るから。この

カツは魚肉で出来ているから

君でも食べれるはず」と。M君の

お母さんは、ライスにビッグカツを

乗せて、上からソースをたっぷりと

かけてくれた。

 

こうしてM君の家でM君と一緒に

初めて食べた「カツ丼」は、とても

美味しかった。駄菓子のビッグカツ

をライスに乗せるというM君の

お母さんの柔軟な発想に感服した。

 

肉を食べれない自分が食べた、

初めてのカツ丼。私は味っ子に

出て来る味皇様のように、

心の中で叫びたい気持ちに

なった。

 

こうして、私はやっとカツ丼を

食べることができた充実感に

満たされていた。