早朝に、元女子アナで大学時代の

私の友人だったKさんから、いきなり

電話がかかってきた。このKさんに

ついては、私は2023.6.25に

「女子アナと宝塚の話」

というブログにも書いたのだが、

小籔一豊さんの表現をお借り

すれば「天然の人」であり、

何をするかわからない面白い人

である。

 

Kさんから昼1:00にJR新大阪駅に

来るように言われたので、私は

久しぶりに彼女と会うことにした。

Kさんは目的を言わなかった。

私には今日の行き先もわからない。

それでも、Kさんと共に外出すると、

昔からいろんな出来事が起きるので

楽しめるだろう。

 

私は昼1:00にJR新大阪駅に行って、

数年ぶりにKさんと再会した。彼女は

私に「付いて来て」と言ったので、

私は言われるがままに彼女に付いて

行った。

 

私達は阪急の淡路駅に到着した。

Kさんは「ここに入りたい」と言った。

私は淡路によく来たことがあるのだが、

久しぶりに来てみると、本格的な

インド料理の店ができていた。阪急の

淡路駅の近くにこういう店ができて

いることを知らなかったので、私は

驚いた。この店は人気があるようで、

昼時にはずいぶん込んでいたが、

私達は待ってから何とか入店できた。

Kさんが私を呼んだ理由は、どうやら

インド料理を食べたかったかららしい。

Kさんは「本格的なインドカレーを

食べたい」と繰り返していた。

 

私はカレーが好きだ。例えが古く

なるが秘密戦隊ゴレンジャーの

キレンジャーぐらいカレーを

食べているかも知れない。

カレーが好きだから、カレーを

好む人達の本も読むようになった。

私は特に大槻ケンヂさんや

安西水丸さんの本をよく読んでいた。

 

以前からこういうインド料理店に

興味はあったのだが、本場のカレーは

辛そうで、私はベジタリアンで肉を

食べれないので、こういうお店で

食べるのは難しいかなと思っていた。

(20代の頃に警察学校にいた頃には、

肉料理が出ると噛まずに飲んでいた。)

 

少し緊張しながら入店してみた。店員の

日本人女性がとても親切だった。料理の

説明までしてくれた。この店では

カレーの辛さを選べるという。私は辛

さが一番マシなノーマルの野菜カレーの

セットと、後でフライドポテトを注文

した。

 

「チャイ」というメニューがある

ことを知って、これはジョジョの

ポルナレフが飲んでいた飲み物だと

思った。小学校時代にジョジョごっこ

をしていて、「ポルナレフ」を

「ポレナルフ」と言い間違っている

友達がいたことを思い出した。

もっと言えば、花京院のスタンドの

「ハイエロファントグリーン」を、

「ハイウェイエメラルド」と

言い間違っている友達もいた。

 

本場のカレーを食べたいと言っていた

Kさんは、カレーを注文せずにチキンを

5ピースとナンを注文した。私は彼女に

「カレーを食べたいんちゃうん?」と

聞いたが、Kさんはメニューのチキンに

心を奪われていた。Kさんは直感で動く。

 

料理が次々とテーブルに運ばれて来た。

店員の女性が本当に丁寧な人で、

この人の存在も、この店に人気がある

理由の一つかも知れない。野菜カレー

のセットにはカレーとナンと豆の煎餅

とサラダとラッシーが付いていた。

これで950円というのはお得だと思う。

それにしても、ナンの大きさには

ビックリした。

 

問題発生。私は初めてインド料理店に

入ったので、カレーやナンの食べ方が

わからない。私が食べ方に戸惑って

いると、Kさんはどんどんチキンを

かじって食べていた。元女子アナが

ドラゴンボールの孫悟空のような

勢いで肉をかじっている様子は圧巻

だった。チキンの色が赤いのも印象に

残った。

 

店員の女性は忙しそうだったので、

私はカレーやナンの食べ方を聞かな

かった。そしてふと2つ左の席を

見ると、中学生ぐらいの男子が

テーブル一杯にカレーやナンや

ライスを拡げて食べているのが

見えた。この男子は常連客らしく、

ドヤ顔でどんどんインド料理を

口に運んでいた。私は恥ずかし

ながら、この男子の食べ方を

参考にしてカレーとナンを

食べてみた。

 

マイルドな野菜カレーは本当に

美味しかった。辛さをノーマルに

選択すると、辛さは全く感じ

なかった。まろやかな口当たりが

良く、ルーの中に入っている

マッシュルームもよく合っていた。

ナンを千切ってカレーに付けて

食べた。ほんのりバターの味が

するナンの味が良い。焦げ目からも

良い風味が漂っていた。これは

美味しい。驚いた。

 

肉食のKさんの個人的な悩みを聞き

ながら、私はカレーやナンを食べ

終えた。インド料理って、こんなに

美味しかったのか・・。感動した。

後でフライドポテトを追加で注文

したのは、Kさんがチキンを

5ピースもかじるのに時間が

かかったからである。

 

店を出る時に、Kさんがレジで店員の

日本人女性とインド人男性達に、

「インドで“ありがとう”ってどう

言うんですか!?」と大きな声で

質問した。店内にいたお客さん達が

一斉にレジにいる私達を見た。

その言葉を教えてもらったKさんは、

「ダンニャワード!」と言って

店を出た。私も「美味しかったです」

と言葉を添えて、店を出た。

 

しばらく歩いてから、私はKさんと

解散した。初のインド料理店での

ひとときを本当に楽しめた。本場の

カレーがこんなに美味しいことを

知れて良かった。ナンも気に入った。

 

大槻ケンヂさんの本の中に、

『行きそで行かないとこへ行こう』

という作品がある。その巻末に

劇作家の宮沢章夫さんが書いた

とても良いカレーの文章がある。

私はふと、そのカレーの文章の

ラストを思い出していた。

 

「サルである。カレーである。

誰だって途方にくれているのだ。

注文した品がテーブルに並ぶ。

カレーを口に含む。再び私の中に

注文するまでのあの意識が蘇る。

もう十年ほど過去の話だ。

麹町のアジャンタが今でも

24時間営業をしているのか、

私はよく知らない」

 

解散した後、個人的な悩みを

抱えていて途方に暮れている

ように思えたKさんの後ろ姿を

見ながら、私はまたこの店に

カレーを食べに行こうと思った。

今回私はKさんの悩みを聞いたが、

私にも悩みはあって、誰もが

何かのことで途方に暮れている

のだと改めて実感した。悩みを

忘れるためではなく、悩みを

乗り越えるために、またカレーを

食べたいと思った。