「あのね………隆弘の彼女やってくの…もう無理かなって…」
さっき千晃の口から出た衝撃的な一言が頭の中でグルグルしてる
なんで?
あんなに仲良さそうだったのに…
光「その気持ちはいつから?」
千「秋頃かな…進路の事で相談してた時…」
光「進路?」
千「うん…隆弘が外部の学校に進みたがってるのは知ってるよね?」
光「あぁ、あいつ芸大いきたがってんだよな」
千「うん。でね、隆弘が行きたい学校に服飾科があったから同じとこ通おうかな…って相談したんだけど…」
光「同じ学校は嫌って言われたんだろ?」
千「え…」
光「何となく言いそうやん。あいつ彼女だからってベタベタしたくないタイプだし、ドライな割には周り気にするし、学校も同じだとお前に気を使って自由に出来ないと思ったからだろ…」
千「そう…いう事…なのかな…」
光「だと思うけど…」
千「それでもなんで嫌なのか言わないし、びっくりするくらい冷血な表情で言われたから…隆弘からしたら私なんてべつに離れててもなんとも思わない存在なのかなって…」
「そんな……」
光「………千晃と同じなのが嫌なんじゃないと思うけど…」
千「え…」
光「はぁ……ほんとはこんな事言いたくないんだけど…」
「光啓…?」
光「俺らも千晃や紗矢香と同じなんだ」
「私たちと?」
「うん。お前らも割と目立つから、実際今でも色んな奴から「伊藤さんが男と喋ってるよ?いいの?」って聞かれること多いんだよ」
千「そうなの?」
光「うん。俺なら嫉妬したリアクションして済むけど、あいつはあんな性格だし人前で彼女の事とか喋るのも聞かれるのも嫌いだからな…
そういうのリアクション困るんだろうな…
なんか言ったら言ったで女子が嫉妬して千晃の陰口言うし…」
千「……」
光「正直もうウンザリなんだと思う…だからこそ大学くらいはそういうのない所にいたいんだろ…」
千「そっか…」
光「千晃の考えすぎだよ。……まぁ、あいつも言葉足らずだけど、気持ち…分かってあげて」
千「……」
千晃の私を見る表情が物語る
違う……
きっと千晃は……
「…千晃はさ、それが寂しいんじゃない?」
光「……紗矢香?」
「千晃って本当は彼氏と楽しそうに喋ってる女の子に焼きもち妬いちゃうし、学校でも普通にカップルしたいのに出来ないのが寂しいんだよね?」
千「さすが紗矢香だね(笑)」
「昔からずっと一緒だもん、それくらい分かる…」
光「……」
千「性格が違いすぎて、というか…温度差がありすぎて正直ね…もう、合わせるの疲れちゃって…」
なんて言ってあげたらいいのか分かんない
こういう時恋愛経験乏しい親友で申し訳なくなる…
光啓もかける言葉が無くなって…
周りの賑やかな会話に不釣り合いなくらいの沈黙にただただ胸が痛い…