空気が重い
正直、早くこの状況から抜け出したい…
けど、紗矢香の思いを無下には出来ない
傷付けられた相手とその元凶を作った恋人の行く末を今どんな思いで見てるのか…
俺なら耐えられない
無言が続く中そんな事を考えていた
…………
『「……あのっ…」』
光「あ、そっちから…どうぞ…」
『うん、…あの…まずは、今までの事…ごめんなさい』
光「あ、うん…俺の…せいでもあるし」
『…わたしね、昔からずっとこの見た目がコンプレックスだったの…』
光「え…そうなん?」
『うん……発育が良すぎてね、中学生になる頃にはけっこうな胸の大きさでさ…
男子からの好奇な視線や通りすがりの人からのエッチな視線が毎日で、それが気に入らない女子からの嫌味ももちろんあった…』
光「……」
『それが嫌で苦しいくらいに締め付けたりしたんだけど、それも気に入らないとかでまた嫌味言われて……
そんな毎日過ごしてるともう気持ちが麻痺してくるんだね、
2年になる頃にはそれを逆手にとるように色目を使うことを覚えたの…
中学卒業する頃には身体の関係も覚えてた。
ここに入ってすぐに日高くんに声かけられて…その時も胸しか見てなかったもんね(笑)』
光「なんか…ごめん/////」
『ううん…その時ね、すごく嬉しかったの』
光「え?」
『カッコイイ人だなと思ってた人から、顔もタイプだしスタイルいいねって言われて嬉しくない女の子はいないよ…
だからホテル着いて行ったんだもん(笑)
そしたら私とは相性がいいって言われてさらに嬉しくて…』
光「なんか、とんでもねーな…俺////」
『分かってたの、日高くんは私をそういう対象にしか見てない事は……』
光「真中…」
『わかってたのに…
エッチする度に日高くんの事が好きになって…いつしか独り占めしたいと思うようになってた…
けど、あの日好きな人が出来たから関係を終わらせたいって言われて悔しくて…
こんなに好きなのにいくら身体で繋がっても、日高くんの気持ちは三浦さんにいとも簡単に持ってかれて…
めちゃくちゃ悔しかったの』
光「……ほんと自分勝手でごめん…」
『諦めようとしたんだけど、膨らんだ気持ちは簡単になんか収まらなかった…
三浦さんに見た事ない優しい笑顔でほほ笑みかけるのを見る度に苦しくて…
今思えば三浦さんへの羨ましい気持ちと嫉妬心でおかしくなってたんだと思う(笑)』
光「ごめん!真中の気持ちも考えずに、自分の欲望と気持ちばっかりで……ほんとに申し訳ない!」
『顔、あげて?謝られる立場じゃないもの、私は…(苦笑)』
光「真中………」
『日高くん、あなたの事がずっと好きでした。』
光「ありがとう……ごめんな、応えられなくて…」
『いいの。こうしてちゃんと伝えられただけで満足……大切な人に、怖い思いさせてしまってほんとにごめんなさい』
光「紗矢香が許したんだ、俺も許さないとな(笑)」
『可愛いくて、素直で優しい子だね…三浦さん』
光「だろ?でもあれでも真中と同じ様に昔から苦労して来てるんだ…
…引越し先でも頑張れよ…今度はちゃんと真中の事見てくれる人見つけろよ?」
『日高くんよりもイイオトコ見つけるから(笑)』
光「掃いて捨てるほどいるわ(笑)」
『ぷっ…いないよ(笑)三浦さんも日高くん相手は大変だね~』
光「どういう意味だよ」
『冗談だよ(笑)じゃあ…もう行くね』
光「最後にちゃんと話せてよかったよ…元気でな(^^)」
『三浦さんにもありがとうって伝えて?』
光「わかった、じゃあな」
ちゃんと向き合えた…よな……?
初めて見た彼女の笑顔
何か心のもやもやがふっきれたような、清々しい表情にも見えた
これで…もう真中を傷付けることも、紗矢香を悲しませることもない
これで…全て終わったんだ
軽やかに母親の元に向かう真中の背中を見送ると、向こうで待ってくれている愛しい彼女の元へ向かう