ピロンッ
「ん?…光啓だ♪」
日)こっちでの仕事終わったから今から寄るよ~(^_-)-☆
泉)ほんま!?待ってる~♪
光啓が置いて行ってくれた本を読み終わるとLINEが入った音
忙しいくせにこうやってマメに連絡くれて、今日だって仕事の後に寄ってくれる…
けど、仕事は大丈夫なのだろうかと心配してしまうんだ…
素直に喜べないなんて可愛くないよな…
『吉井泉さん』
声がして視線を向けると小さくて可愛らしい女の人
知り合いだっけ…?
「あの…どなたで…『光啓を返して』
「え…?」
『私、光啓と付き合ってたの……でも…忘れられなくて……』
「……そんなこと…言われても…」
『仕事大好きな人だから…1度寂しさから他の男の人の方に行ってしまったけど…それでもほんとに好きなのは光啓だけだった……今ならちゃんと支えてあげられる自信ある…
自分から離れた私が悪いのは分かってる…
だからあなたを選んだ光啓に何も言えなかった…
ホントはまだ好きなの…
ねぇ…光啓、返してよ』
「……そんな事…出来ないよ…私だって…私だって大好きなんだもん…」
『……子供も産めないのに?』
「え?」
『子供産めなくなったんでしょ?
…光啓、子供ほしがってるよ…もう叶えてあげられないんじゃ、あなたがそばに居てもしょうがないじゃない…』
「…そ…んな…事…ない」
『あなたと一緒じゃ光啓は幸せにはなれないの、分かんない?』
「光啓の幸せは…光啓自身が決めるもんでしょ?」
『それでも光啓には未来があるの!私なら何人だって産める!恋人の子供も産めない人がいつまでもしがみつかないで!!』
「………」
バタンッ
「…そんな事…言われても…私だって…好きでこんな体になったんじゃない……」
思いもよらなかった辛辣な言葉が頭に響く
呼吸をするのも忘れるほどにショックと驚きで息が詰まりそう…
落ち着き始めた心がまたざわざわし始めたから、点滴の時間まで少し散歩をしようと外へ
──光啓には未来があるの!私なら何人だって産める!恋人の子供も産めない人がいつまでもしがみつかないで!!──
さっき言われた言葉が頭の中をぐるぐる回ってる…
妊娠出産という女としての幸せを得られなくなってしまった私がこの先生きていく意味ってなんなんだろう…
そんな事を考えていたら屋上についた
空はどこまでも晴れてるのに、私の心だけ分厚い雲がどこまでも広がってる…
そうだ…指輪…
薬をのみはじめてから、痩せ始めた為にネックレスとしてずっと身につけていた
また指につけたら……
光啓に相応しい人になるのかな…
「あっ」
指が少し細くなっていたのか指から落ちてフェンスの向こうへ転がっていった
「取れるかな…」
幸い段になってる所までは入れそうだからフェンスから出て手を伸ばす
「意外と高いな~ここから落ちたら死ねるのかな…」
私が消えてしまえば光啓はちゃんと幸せになれるのかな…
自分の存在価値が見いだせなくなってしまった私は、らしくない考えしかもう浮かばない
このまま飛んだら…
「おいっ!…何してんだよ!!!やめろ!」
声の方向へ振り向こうとした時にはすごい力で抱きしめられていた
「光啓…」
抱きしめる手が震えている…
あぁ…また…心配かけちゃった…